体外受精って何するの?受精・培養・移植について解説します

前回は体外受精の刺激法についてお伝えしました。今回は、体外受精をする際に行われる「受精・胚培養・胚移植」について詳しく解説していきたいと思います。ここでも様々な選択肢があり、医師と相談しながらどのような方法を選ぶか決めていく事になります。

この記事の監修医師

体外受精で行われる受精方法とは?

体外受精で行われる受精方法には、卵子に精子をふりかけて受精させる通常の体外受精方法(c-IVF)と、1個の精子を選び取って受精させる顕微授精(ICSI)と呼ばれる方法があります。

体外受精の受精方法は精子の状態により、通常の体外受精で行うか、顕微授精で行うかを判断することになります。

また、通常の体外受精(c-IVF)を行って4時間から5時間経過したタイミングで卵子と精子が受精していない時は、レスキューICSI(Rescue-ICSI)と言って顕微授精を行うクリニックもあります。

レスキューICSI(Rescue-ICSI)が可能なクリニックであれば、体外受精では全く受精しなかった場合でも顕微授精で授精させることが可能になります。

HPや事前に行われる体外受精説明会等でこのレスキューICSIが行われているかどうかを確認しておくこともクリニック選びの一つのポイントになるかと思います。

体外受精後、16時間から20時間後に受精状態の確認が行われます

体外受精における精子の選別方法は?

体外受精を行う時に、以下の目的で精子の処理を行います。
・運動性に問題のない精子を回収するため
・十分な受精能を持った精子を回収するため
・出来る限りDNA損傷の少ない遺伝子を回収するため

ここでは代表的な2つの方法について解説していきます。

Swim-up法

精子自身の運動性により良好運動精子を回収する方法

精液又は洗浄した精子を培養液の中に入れて、30分から60分間インキュベーター(一定の温度に保たれた場所)の中で静かに置いておく。
その間に運動性が良好な精子が上に泳いであがってくるので、それらの精子を集めて体外受精に使用する。
精液の状態が正常な時に行われる方法

密度勾配遠心法

精液中に混在する、死滅精子や奇形や未熟な精子・白血球などの不純物を比重の違いを利用して除去し、良好な精子だけを選別する方法
遠心分離を用いて回収される。

密度勾配遠心法でまず成熟精子を回収し、その後Swim-up法で運動性が良好な精子を回収するという方法を用いているクリニックもあります。

精子の選別方法はその後の体外受精の結果にも大きく関与してきます。
どのような方法で精子が選別されているのか、体外受精に進む前には確認しておくことをお勧めします。

受精卵の成長過程と胚の評価方法とは?

精子と受精した受精卵は一般的に5日間で胚盤胞まで成長していく事になります。

一般的な胚の成長過程としては、
2日後(約44時間後)には4細胞期
3日後(約68時間後)には8細胞期胚
4日後(約92時間後)には桑実胚
5日後(約116時間後)には胚盤胞、に成長していきます。

初期胚とは8細胞期までの胚を指します

これらの胚は分割のスピードや胚の形態(見た目)で評価され、移植時にどの胚から戻すかを決めることになります。

分割のスピードなどは「タイムプラス」という専用の培養器を用いて測定します。
このタイムプラスという測定器を用いることで、5日間培養器から胚を取り出して観察する必要がなくなり、より質の高い胚の培養を促すことが可能となっています。

「初期胚」の評価方法は?

初期胚は以下の項目を基準にVeeck分類と呼ばれる方法でグレード1~グレード5に分類して評価する方法が広く用いられています。
・分割速度
・分割された割球の対称性や大きさの均一性や透明度
・細胞質の断片化(フラグメント)の有無

グレードは1がもっとも良く、細胞の大きさが均等でありフラグメントを認めない良好な胚になり、数値が大きくなるにつれて細胞の大きさも不均等になり、フラグメントの数も増えていきます。

グレード5になると、フラグメントが多くほとんど細胞を認めない状態になります。

フラグメントが少量であればそこまで大きな影響を及ぼすことはないと言われていますが、フラグメントが全容量の25%以上を占めるような胚では着床に影響を及ぼすとも言われています。

分割のスピードに関しては、正常な速度と比べて早すぎても遅すぎても着床率や染色体異常率に影響がでるという報告があります。

「胚盤胞」の評価方法は?

胚盤胞の評価には一般的にグレード分類と呼ばれるものが用いられます。
この方法は胚盤胞腔の広がりと孵化の程度によってまずは6段階に分類されます。
1 初期胚盤胞
2 胚盤胞
3 完全胚盤胞
4 拡張胚盤胞
5 孵化中胚盤胞
6 孵化後胚盤胞

さらにグレード3以上の胚盤胞に関しては、胚盤胞を構成する「内細胞塊」と呼ばれるものと「栄養外胚葉」と呼ばれるものの状態によってA~Cの3段階で表され、最終的に3ABや4BBのように評価されます。

この評価は、どの胚盤胞を優先的に移植するかの判断に用いられます

初期胚と胚盤胞、どちらが妊娠しやすい?

一般的に採卵から5日間で胚盤胞まで成長すると言われていますが、成長スピードがゆっくりな胚もあるため、6日目や7日目まで培養させた胚で妊娠に至ることもあります。

受精卵が胚盤胞になる確率は、年齢によっても変わってきますが、全ての受精卵が胚盤胞になるわけではありません。

胚盤胞到達率はクリニックごとにも違いがあるため、体外受精をするクリニックを選ぶ際はHPで確認したり、体外受精説明会等で確認してみましょう。

初期胚に関しても胚盤胞に関しても、評価は胚培養士や医師が見た目で(形態学的に)判断するため、クリニックによって評価基準が微妙に違ってくることがあります。

胚の評価で疑問点がある場合は、医師や培養士に質問するようにしてみましょう。
この時に親身になって質問に答えてくれるかどうかもクリニックを選ぶ際のポイントになります。

胚の成長には培養液の種類も影響してきます。培養液にはいくつかの種類があり、各クリニックが培養室の環境などにあわせて選んで使用することになります。

何度採卵を繰り返しても良好胚が得られない場合は、転院することで医師や培養士だけではなく、培養環境や培養液がかわることで良好胚が得られて妊娠に至ることもあります。

胚移植の方法は?

受精卵を移植する際には
1. 初期胚か胚盤胞まで育てた胚、どちらを移植するのか
2. 新鮮胚か凍結胚どちらの方法で移植を行うのか
3. 凍結胚の場合、自然周期で移植するのかホルモン周期で移植するのか

まずはこの3点を決めることになります。
ここはクリニックの方針で決まっているところもあれば、医師と相談しながら選択するクリニックもあります。

1. 初期胚移植か胚盤胞移植か?

胚盤胞まで育てた方が、初期胚より胚の状態を判断しやすく、より着床しやすい胚を選ぶことが可能です。
そのため、初期胚を移植するより、胚盤胞まで育った良質な胚を移植する方が、妊娠率は上がることになります。

最近は胚盤胞まで培養して移植するクリニックが増えています。すでに胚盤胞まで到達したものの中からより良い形態の胚盤胞を選ぶため妊娠率は上がりますが、胚盤胞にならないと移植できないというデメリットもあります。

胚盤胞にならない胚でも初期胚で移植していれば妊娠できていた可能性もあるため、なかなか胚盤胞まで育たない場合は、初期胚での移植を検討してみるのも一つの方法です。

2. 新鮮胚移植より凍結胚移植が多い理由は?

新鮮胚移植とは採卵周期に行う移植のことであり、凍結胚移植とは採卵周期に移植を行わずいったん胚を凍結して、別の周期で胚を融解して移植を行う方法です。

新鮮胚移植の場合は、胚に凍結や融解の負担をかけないという点ではメリットがあります。
凍結胚移植の場合は、胚に凍結や融解の負担はかかるものの、採卵周期とは別の周期で移植を行うため、子宮の状態が排卵誘発剤の影響を受けないため着床率が高くなるというメリットがあります。

また、新鮮胚移植を予定していても卵巣過剰刺激症候群のリスクがある場合は、全胚凍結に変更します
現在は凍結胚技術の向上もあり、新鮮胚移植より凍結胚移植の方が一般的に行われています。

3. 自然周期移植とホルモン補充周期移植の違い

凍結胚移植を選択した場合は、さらに自然周期で移植を行うかホルモン補充周期で移植を行うかを選択します。

≪自然周期移植≫

超音波エコーでの卵胞の確認と黄体化ホルモン(LH)の測定により排卵日を特定し移植日を決定する。

メリット
薬剤の投与が基本不要で費用が安く抑えられる

デメリット
排卵日を特定するための通院回数が増える
排卵が確認できずに移植がキャンセルになることがある

≪ホルモン補充周期≫

月経開始後よりエストロゲン製剤を用いて子宮内膜を増殖させ、子宮内膜が良好な厚みになった時点でプロゲステロン製剤の使用をスタートする。
プロゲステロン製剤開始日を排卵日として胚移植の日程を決める

メリット
スケジュールがコントロールしやすい
通院回数が抑えられる

デメリット
使用する薬が増えるため、費用が高くなる

妊娠率をあげる?追加で選べる様々な移植方法

妊娠率をあげるために様々な移植方法が考案されており、クリニックによってはこれらの移植方法を追加で選ぶことができる場合もあります。

二段階胚移植法

最初に初期胚を移植し、残りの胚は培養して5日目に胚盤胞を移植する方法
初期胚で子宮内膜を着床しやすい環境にし、その後に胚盤胞を移植することで着床率をあげることが狙い。
胚を2つ戻すため、双子になるリスクがある

SEET法

二段階胚移植では多胎のリスクがあがるために考案された方法。
胚盤胞培養に用いた培養液を凍結保存しておき、胚盤胞移植前日に融解して子宮内に注入する方法
事前に胚盤胞培養に用いた培養液を注入することで二段階胚移植と同様に子宮内膜を着床しやすい環境にすることが狙い。
この方法を用いることで初期胚を使う必要がなく、胚盤胞だけの単一移植が可能。

胚移植の個数に関しては、以前は妊娠率をあげるために、1回の移植につき多数の胚を移植していた時期がありました。

しかし、複数の胚を移植することで多胎妊娠の可能性があがることから、2008年4月に「移植する胚は原則一つとする。35歳以上または、2回以上続けて妊娠不成立であった場合は、2個胚移植を許容する」という見解が日本産婦人科学会からだされています。

いかがでしたか?受精・培養・移植には本当にさまざまな方法があり、またクリニックによっても採用している方法が違います。事前にある程度の知識をつけた上で説明会などに参加するのも良いですね。

参考書籍
データから考える 不妊症・不育症治療 第1版 (株)メディカルビュー社
生殖補助医療(ART) 胚培養の理論と実際 (株)近代出版

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