卵子凍結を考えるときに知っておきたい基礎知識(後編)

卵子凍結を考えるときに知っておきたい基礎知識(前編)」に引き続き、後編では実際に卵子凍結を行う際の流れや費用などについてお伝えしていきたいと思います。

この記事の監修医師

卵子凍結が可能なクリニックはどうやって探すの?

医学的卵子凍結を希望する場合は、実施しているクリニックの一覧が産婦人科学会のHPにありますので、そちらから最寄りのクリニックに相談する、もしくは現在がん治療を行っているクリニックから紹介してもらう方法があります。

しかし、社会的卵子凍結に関してはまだまだ実施しているクリニックも少なく、東京や大阪近郊など都市部に多い傾向があります。(独身で卵子凍結ができるクリニック一覧はこちら
そのため、地方で卵子凍結を希望する場合は、東京や大阪まで通院する必要が出てきます。

ただ、最近は社会的卵子凍結を行うクリニックも増えてきていますので、HP内に記載がなくとも、社会的卵子凍結を実施している場合もあります。
体外受精が可能なクリニックであれば、技術的には可能ですので、近くでクリニックを探したい場合は一度、近隣のクリニックに問い合わせてみるのも一つの方法です。

また、卵子凍結は卵子を凍結して終わりではありません。
数年後に凍結した卵子を使用する際に、もう一度通院する必要があります。
その時に卵子を最寄りのクリニックに移動させるという方法もありますが、クリニックによっては未受精卵の移動は受け入れてくれない場合もありますし、採卵したクリニック自体が卵子の移動を原則NGにしている場合もあります。

なので、凍結しておいた卵子を将来使用することも想定しながらクリニックを選ぶ必要があります

卵子凍結の流れと通院頻度

卵子凍結を考える方は基本的に働いている方がほとんどかと思います。仕事の合間に通院する必要があるため、出来るだけ通院回数を減らしたい、仕事に影響が出ないように土日や夜間に通院したいという希望を持っている方も少なくありません。

夜間の通院に関しては、対応しているクリニックを探すことで解決できますが、卵子凍結のための採卵は生理周期にあわせて行われるため、平日午前の通院が必要になることも。
また、生理終了後から採卵までの間は頻繁に通院しなければならないことも少なくありません

卵子凍結までの流れや通院回数はクリニックによって変わってきますので、実際には通われるクリニックで最初に通院スケジュールを確認してから、卵子凍結を行うかどうかを判断するのも一つかと思います。

卵子凍結をしようと決めても、突然クリニックに行って採卵が出来るわけではありません。

まずは医師から卵子凍結について説明を受け、検査を受ける必要があります。
その後、卵子凍結を行うと決めたら、卵子凍結に向けて準備を進めていく事になります。
通院回数が頻繁になるのは、採卵の周期ですがそれ以外にも何回か通院が必要になってきます。

排卵誘発剤の注射は自宅で行えるものもありますので、通院回数を減らしたい場合は医師と相談して自己注射を選ぶのも一つの方法です。

ただし、自己注射を選んでも何回かはエコーで卵胞の状態を確認するために通院が必要になります。

卵胞の状態を確認するための通院は、仕事の前や仕事の後に行くことは可能ですが、採卵の時は休暇を取っておくほうが望ましいでしょう。

また、1周期で思った数の卵子が採卵できなかった場合は、さらに追加で次の周期に採卵を行う場合もあります。そちらも医師と相談して決めていく事になります。

卵子凍結、妊娠に必要な個数は?

では、実際にどれぐらいの卵子を凍結しておくとよいのでしょうか?
こちらに関しても、まだまだデータが十分ではなく、明確な個数は提示されていませんが、20代後半で90%以上の妊娠率を目指すのであれば16個の卵子が必要だという報告もあります。

ただし、これは20代後半での数であり、年齢が上がるにつれて妊娠に至るまでに必要な卵子の数は増えていくことになります。

クリニックによっては、HPに最低10個は卵子を凍結しておきましょうと書かれていますが、実際には可能であればもう少し卵子を凍結しておく方が妊娠の可能性はあがることになります。

卵子凍結にかかる費用はどのくらい?

卵子凍結をするにあたって、多くの方が気になることの一つが“卵子凍結にかかる費用”ではないでしょうか?

卵子凍結は自由診療のため、費用はクリニックごとによって変わってきますが大きく分けると以下の金額が必要になってきます。

①検査・排卵誘発(3~10万円)
②採卵手術(10〜30万円)
③凍結・保管(20~50万円)

誘発方法や、採卵できた卵子の数や、保管期間によって費用は大きく変わってきます。

特に、保管費用は卵子の個数ごとで値段が設定されている場合と、個数関係なく1回の採卵で決められている場合とあり、クリニック間でも大きな金額差が出てきやすい部分です。

保管期間が長くなる場合(20代で採卵した場合など)や多くの卵子を凍結したい場合は、事前に保管にかかる費用をきちんと確認し、いくら必要なのかをしっかりとシュミレーションしておくことをお勧めします。

出来るだけ費用のかからないクリニックで卵子凍結を行いたいと思われる方も少なくありませんが、かかる費用だけでクリニックは選ばないようにしましょう
排卵誘発を低刺激なもので行い、凍結する卵子を少なくすれば、費用は他に比べれば安く済みますが、凍結する卵子の数が少なければそれだけ将来の妊娠の可能性も下がることになってしまいます。

卵子凍結をした後、使用して妊娠するには?

卵子凍結をした後、数年後に妊娠を望み凍結した卵子を使用する場合は、体外受精の“受精”と“移植”というステップに進むことになります。

その際は、採卵の時ほどではありませんが、もう一度生理周期にあわせてクリニックに通う必要が出てきます。
また、その際にも数十万ほど費用がかかることになります。

クリニック選びのところでも書きましたが、基本的には採卵を行ったクリニックで移植を行うことになります。
その為、クリニックを選ぶ際はある程度、不妊治療実績のあるクリニックを選ぶことをお勧めしています。

卵子凍結は卵子を凍結して終わりではなく、妊娠までの長い付き合いになることも視野に入れながらクリニックを選ぶようにしてみてください。

ただし、卵子を凍結しているからといって必ずしも体外受精を行わなければならないわけではありません。
お二人の間に特に不妊の原因もなく、年齢的にも問題なければ、一人目は自然妊娠を、2人目以降に凍結した卵子を使用するという方法もあります。

パートナーがいる場合は受精卵での凍結をおすすめ

今まで、パートナーがいない独身の方を想定して卵子凍結について書いてきました。しかし中にはパートナーはいるが、仕事の都合等で今は妊娠を考えられないという方もいらっしゃいます。

もちろん可能であれば、卵子凍結を選ぶのではなく今妊娠・出産することが本当に難しいのかを考えてほしいと思うのですが、どうしても今は難しいという場合もあります。

そういう場合は、未受精卵の卵子凍結ではなく受精卵の状態で卵子凍結をすることをお勧めします。ただし、パートナーと別れた場合は、その受精卵を使うことが出来なくなりますので注意が必要です。

未受精卵より受精させた卵子の方が融解時の生存率が高いこと、受精というハードルを一つ越えていることでより妊娠の可能性が高くなるからです。

また、未受精卵の卵子凍結を行っていないクリニックでも受精卵の卵子凍結であれば対応が可能な場合もあります。(通常の体外受精の手順と同じため)

注意!卵子凍結をしたから絶対に妊娠できるわけではない

妊娠・出産のタイミングに悩む女性は決して少なくありません。
年齢とともに妊娠率が低下していくこと、妊娠・出産にはリミットがあることは当の女性が一番よく理解しています。
でも、妊娠・出産を先送りにしてでもやりたいことがある人も少なくありません。

そんな女性にとって“卵子凍結”という技術は一つの希望かもしれません。
ただ、”卵子凍結”は決して魔法の技術ではありません。
”卵子凍結”をしたからといって必ずしも妊娠できる保証はないのです。
受精卵になるためには精子も大きく影響してきます。
実際に精子と受精させて1個も受精卵が育たなかったということもあり得るのです。

また、“卵子凍結”には保管費用も含めるとそれなりの費用が必要になってきます。
絶対の妊娠は保証されていないのに、50万~100万近い費用が必要になってくるのです。

それでも5年後、10年後に子どもを望んだ時には、20代の時の卵子を凍結していたからこそ妊娠できたという人も、今後はきっと増えてくるでしょう。

卵子凍結のメリット・デメリットを十分に考慮したうえで、卵子を凍結するのかどうか考えていく必要があるのではないかと思います。

前編・後編と2回にわたって、卵子凍結を考えた際にこれだけは知っておいてほしい基本的なことをお伝えしてきました。

数年前と比べて、卵子凍結を行うクリニックも増えており、”卵子凍結”そのものも広く知られるようになってきました。

これからはますます選択肢の一つとして卵子凍結が上がってくる時代になるでしょう。
だからこそ、様々な情報を得たうえで卵子凍結をするかしないか考えていただく参考になればと思います。

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