妊活を続けて半年、1年経つと、「そろそろクリニックを受診しようか?」「まずは不妊検査だけでも受けようかな?」と考え始める人も少なくないかと思います。
と、同時に「不妊検査ってどんなことをするの?」「検査にかかる期間と費用は?」「病院を受診するのにベストなタイミングは?」など、気になることが色々と出てきますよね。
この記事では基本的な不妊検査の流れや項目、検査を受ける際の注意点などをお伝えしていきたいと思います。
この記事の監修医師
産婦人科専門医 / 生殖医学会生殖専門医
順天堂大学医学部産婦人科客員准教授
順天堂大学医学部卒業。順天堂大学産婦人科先任准教授(助教授)、順天堂大学医学部附属浦安病院リプロダクションセンター長を歴任。世界初となる公費助成の「卵子凍結保存プロジェクト(千葉県浦安市)」の責任者。2019年メディカルパーク横浜を開院。
目次
月経周期にあわせて行われるスクリーニング検査とは?
不妊クリニックを最初に受診した際に行われる検査を“スクリーニング検査”といいます。
女性の検査は月経周期にあわせて行われます。これは、月経期、卵胞期、排卵期、黄体期でホルモンの分泌量が変わってくるからです。
その為、各時期で採血を行い、その時期に合わせたホルモンの分泌がきちんとおこなわれているかを確認します。
クリニック受診のタイミングや検査予約の状況にもよりますが、基本的には月経周期の1周期か2周期かけて検査が行われます。
その為、全てのスクリーニング検査を行うには最低でも4回程度はクリニックに通う必要があります。
不妊治療を考えている人は、すぐに治療開始ができるわけではないことを覚えておきましょう。
では具体的に、月経周期にあわせてどのような検査が行われていくのでしょうか?これから説明していきますので、不妊検査を受ける際に参考にしてみてください。
(クリニックによって若干検査の時期がずれることがあるので一つの目安としてください。)
月経期(3日目~7日目)もしくは月経終了直後に行う検査
・ホルモン測定(LH FSH プロラクチン エストラジオール(E2))
・経膣超音波検査
ホルモンの値を測定することで、排卵障害の原因や閉経の徴候を確認することが可能になります。
LHの値がFSHより高い場合はPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の可能性があることがわかります。
視床下部や下垂体が原因の無月経の場合は、LHやFSHの値が低値を示します。
また、FSHの値は卵巣予備能の評価に有用とも言われています。
また超音波検査で卵巣の状態や子宮の状態を確認します。
基本的には生理終了後に行うクリニックが多いと思いますが、生理期間が長い場合などは受診のタイミングを一度医師に相談してみましょう。
【用語の説明】
LHとは…
黄体化ホルモンと呼ばれ、脳下垂体から分泌されるホルモンである。
LHの検査をすることで、脳からの性ホルモンの分泌がきちんと行われているか、卵巣がきちんと働いているかを確認することが出来る。FSHとは…
卵胞刺激ホルモンと呼ばれるホルモンであり、LHと同じく脳下垂体から分泌されるホルモンである。卵胞の発育やエストロゲンの分泌を促進するホルモンである。プロラクチンとは…
脳下垂体から分泌されるホルモンであり、乳汁分泌作用と性腺の抑制作用をもつ。その為、プロラクチンが多く分泌されると卵巣機能を抑制し、排卵が行われなくなってしまう。エストラジオール(E2)とは…
エストラジオールとはエストロゲン(卵胞ホルモン)の中の一つのホルモンで、エストロゲンの中で、一番主となるホルモンである。卵巣から分泌され、卵胞発育や子宮内膜の増殖などに関わるホルモンである。プロゲステロンとは…
プロゲステロンは黄体ホルモンとも呼ばれ、排卵後にホルモンの値が上昇する。プロゲステロンは受精卵の着床条件を整えるなど着床に関わるホルモンの一つである。高温期7日目頃に測定し、黄体機能に問題ないかどうかを確認する。
卵胞期に行う検査
・子宮卵管造影検査
・経膣超音波検査
超音波エコーによって卵胞の発育状態や子宮内膜の厚さを確認していきます。
子宮卵管造影検査に関しては、【卵管造影検査を受けるタイミングはいつ?検査は痛い?】の記事も参考にしてください。
排卵期に行う検査
・経膣超音波検査
・尿中LH検査(排卵検査薬)
・子宮頸管粘液検査
・ヒューナーテスト
卵胞期に引き続き、超音波エコーによって卵胞の発育状態や子宮内膜の厚さを確認しながら、あわせて排卵日を予測していきます。
そろそろ排卵が起こりそうというタイミングで尿中のLHを測定します。
排卵期の受診時は尿中LHの検査があると考え、診察前にトイレに行ってしまわないように注意が必要です。
どうしてもトイレに行きたい場合は、先に看護師さんなどクリニックのスタッフに声をかけてみて、尿検査がないか確認してみましょう。
クリニックによっては先に採取用の尿コップをくれるところもあります。
ついつい遠慮してトイレを我慢しがちですが、遠慮せずに聞いてみましょう。
子宮頸管粘液検査は頸管粘液の質や量を確認します。頸管粘液の量が不十分な場合は、医師と相談のうえ、人工授精に進む場合もあります。
ヒューナーテストとは性交後試験と呼ばれ、性交後9時間から14時間の間に実施される検査になります。
採取した頸管粘液中に直進運動精子がいるかどうかを確認します。
ただし、子宮頸管粘液検査やヒューナーテストは実施されていないクリニックもあります。
特に、ヒューナーテストは不妊スクリーニング検査としては推奨されていないため、どうしても精液検査が行えない時のみに活用するというクリニックもあります。
黄体期(高温期7日目頃)に行う検査
・ホルモン測定(エストラジオール(E2)/プロゲステロン(P4))
黄体機能の確認のために、血液検査でホルモンの値を測定します。
黄体機能の状態を確認するには、基礎体温の高温期の持続日数を確認したり、血液検査も一度だけではなく、2度、3度と行って総合的に判断していきます。
月経周期関係なく行う検査
・基礎体温表の確認
【妊活時の基礎体温、測る?測らない?きちんとした基礎体温の測り方】の記事でも触れていますが、クリニックによっては初診時に基礎体温を確認されることがあります。
HP内で初診時に基礎体温表の持参について書かれているか、受診前に確認しておきましょう。
必要とも不要とも書かれていない場合は、予約時に確認するか、3ヶ月分ほどの基礎体温のデータを念のために用意しておくといいでしょう。
・クラミジア抗体検査
血液検査によって測定が可能。月経期か黄体期の血液検査と一緒に行うことが多い検査になります。
クラミジア感染症は性行為により起こり、子宮内膜炎や卵管炎を起こすと事があり、不妊症の原因になる場合があります。
詳しくは【卵管造影検査を受けるタイミングはいつ?検査は痛い?】の記事も参考にしてください。
・AMH(卵巣予備能)
血液検査によって測定が可能。月経期か黄体期の血液検査と一緒に行うことが多い検査になります。
AMHの測定についてはこちらの記事も参考にしてください【AMH血液検査とは?AMHを測ると分かる、あなたの卵巣年齢とは?】
・甲状腺機能検査
血液検査によって測定が可能。月経期か黄体期の血液検査と一緒に行うことが多い検査になります。
甲状腺機能に問題があると、排卵障害や着床障害が起こる可能性が上がります。
・テストステロンの測定
血液検査によって測定が可能。月経期か黄体期の血液検査と一緒に行うことが多い検査になります。
男性ホルモンの一つですが、この数値が高いと排卵障害を起こす可能性が高くなります。
上記以外にも、B型肝炎やC型肝炎、梅毒、HIVなどの感染症の検査や風疹の抗体検査、子宮頸がん検査を行うクリニックもあります。
子宮頸がんの検査以外は、血液で検査が可能であり、実施する場合は月経期か黄体期の血液検査と一緒に行うことが多い検査になります。
また、感染症の検査は人工授精前に必須となっているクリニックもあります。
風疹の抗体検査や子宮頸がん検査は最初のスクリーニング検査に入っていなくても、受けておくことをお勧めします。
多くの場合は追加で検査が可能だと思いますので、一度医師に確認してみてください。
ただし、他府県の不妊クリニックを受診している場合は、自治体から発行されている子宮頸がん検診のクーポンが使えるクリニックで受診する方が金銭的負担は減ります。
スムーズに不妊検査を進めるためにした方が良いこととは?
最初にも書きましたが、基本的な不妊検査は1周期から2周期かけて行われることがほとんどです。
1回クリニックに通院すれば、全ての検査が可能だと思われている方も少なくありませんが、月経周期にあわせて検査を行うため、どうしても時間がかかってしまいます。
とはいえ、出来るだけ早く検査を終わらせてしまいたいと思われている方も多いかと思います。スムーズに検査を進めたいのであれば、生理途中、もしくは生理が終わったタイミングで受診出来るように準備しましょう。
初診予約が必要のないクリニックもありますが、なかには初診予約が3ヶ月や半年待ちというクリニックや、「初診説明会」に参加が必要なクリニックもあります。
説明会すらも予約待ちのクリニックもありますし、初診予約に自己流の妊活期間などの制限をつけているクリニックもあります。
自分が通院したいと考えているクリニックがどうなのか?まずはHPを見て確認してみてください。
もしHPに詳しい内容が記載されていない場合は、一度クリニックに問い合わせて初診予約の取り方や、受診時に必要なものを確認しておくといいでしょう。
また、【卵管造影検査を受けるタイミングはいつ?検査は痛い?】の記事でも書いていますが、卵管造形検査を行っていないクリニックもありますので、予約時に確認してみましょう。
よほどの理由がない限り、卵管造影検査は最初の不妊スクリーニング検査で受けておくことをお勧めします。
検査にかかる費用はどのくらい?
クリニックによって費用が変わってくるので、事前にクリニックのHPで確認していただく、もしくは電話で確認していただくのが一番確実なのですが、最初に行うスクリーニング検査は保険適用のものも多く、1回の検査は数千円から高くても2万円までで行えるところがほとんどです。
ただし、クリニックによっては自由診療のものが多くなるところもあります。感染症の検査や一部の血液検査は自由診療で行われているクリニックもありますので、費用が気になる場合は事前にクリニックに確認しておいた方がいいでしょう。
多くのクリニックは支払い時にクレジットカードが使えることがほとんどですが、こちらもあわせて事前に確認しておくと安心して受診できるかと思います。
クリニックの方針や設備で検査項目が異なることも
上記に記載した不妊スクリーニング検査は一部を除いて、不妊クリニックに行ったら必ず受けてほしい最初の検査項目ですが、全ての検査をどのクリニックも必ず実施しているとは限りません。
特に卵管造影検査は設備の問題もあり、実施していないクリニックもあります。
それ以外にも、血液検査の頻度が少なかったり、項目が少ないクリニックもあるようです。
受診して、検査が進んでから「あの検査は?この検査は?」と不安になったり、検査のためにもう一度クリニックを探さなければいけなかったり…。
そんなことにならない為にも、事前に最初の不妊検査ではどのような検査が行われているのかを確認してからクリニックを選ぶようにしてみてください。
参考書籍
臨床婦人科産科(第70巻 第4号)不妊・不育症診療 パーフェクトガイド 2016年4月20日発行 医学書院