WHOのデータによると、男女の不妊の割合は、
男性側のみが原因あり 24%
女性側のみが原因あり 52%
男女両方に原因あり 24%
となっています。
不妊というと、どうしても女性だけの問題に取られがちですが、男性側に原因があることも少なくないのです。
この記事の監修医師
産婦人科専門医 / 生殖医学会生殖専門医
順天堂大学医学部産婦人科客員准教授
順天堂大学医学部卒業。順天堂大学産婦人科先任准教授(助教授)、順天堂大学医学部附属浦安病院リプロダクションセンター長を歴任。世界初となる公費助成の「卵子凍結保存プロジェクト(千葉県浦安市)」の責任者。2019年メディカルパーク横浜を開院。
目次
妊娠への近道は、カップルで同じタイミングで検査を受けること!
最近は、ご夫婦やカップル、一緒のタイミングで不妊検査を受ける人も増えてきましたが、それでも、まずは女性だけが先に検査を受けるというカップルやご夫婦も少なくありません。
最初にも書きましたが不妊の原因は男女半々です。決して女性だけに原因があるわけではありません。
女性のみが婦人科や不妊クリニックに通院し、検査を受けながらタイミング治療をスタート、その間、男性は一度も検査に来ないまま1年が過ぎてしまったなんてこともよくあります。
男性の仕事が忙しく病院の通院時間のやりくりが難しい…という話も耳にしますが、もし男性側に原因があった場合、女性が時間やお金をやりくりしながら通院した1年は無駄に終わってしまうのです。
基本、タイミング治療は保険診療になりますが、それでもクリニックよっては1年間通院すれば、10万近い出費になることもあります。
費用もですが、その間にお二人とも年齢を重ねることになります。
もし男性側に不妊の原因があるとわかり「早めにステップアップをしておけば…」と思っても、過ぎてしまった時間は取り戻すことはできません。
だからこそ、不妊検査はお二人で同じタイミングで受けることを強くお勧めします。
射精出来ている、性交渉が出来ているからといって妊娠できる訳ではない
「お二人で検査を受けてくださいね。」という話をすると、「射精出来ているから大丈夫」、「性行為ができているから大丈夫」などと言われることがあります。
確かにEDや膣内射精障害で悩んでいるカップルもいらっしゃいますが、射精が出来ていてもそこに精子がいるかどうか、動いているか、前進しているか、形状に問題ない精子がいるかどうかは別問題です。
精液が出ていても、そこには精子がいないことや、いてもごくわずかだったり、動いていなかったり、その場でぐるぐる回っていたり、受精できない精子しか存在しない場合もあります。
精液の中にどのような精子がいるのか?精子の数は十分なのか?などは検査をしてみないとわかりません。
射精出来ているから、性行為出来ているからと安心せずにまずは検査を受けるようにしてみてください。
特に2人目不妊の原因は男性にある事も多い
これはご夫婦で勘違いされていることも少なくないのですが、1人目を自然に授かれたのだから、2人目の不妊検査は不要だろうと思われているご夫婦も少なくありません。
それでも女性の場合は、年齢的な事も気にされて一定期間妊娠に至らなければ不妊クリニックの受診を検討されます。ただ、その場合でも女性だけで検査を受けられることがやはり多いです。
一人授かっているから、男性側に原因はないだろうと思われているのです。
しかしこちらの記事でも書きましたが、年齢によって妊孕力が衰えるのは女性だけではありません。
男性も年齢とともに精子の状態に影響が出てきます。
また、精子の妊孕力は加齢だけではなく、生活習慣や肥満などの影響も受けます。
第1子の妊活時と比べて、第2子の妊活時で体重が5㎏、10㎏増えたなんて言う場合は、精子の状態が悪くなっている可能性もあります。
仕事が忙しくてまったく運動をしなくなったという場合や、たばこの本数や飲酒量が増えたなんて場合も精子に影響している可能性があります。
それ以外にも、健康診断で中性脂肪やコレステロール、血糖値や血圧などいわゆるメタボリックシンドロームにかかわる項目を指摘されていませんか?
これらの項目も精子の妊孕力に影響してくると言われています。
2人目妊活を始めて、半年から1年たっても妊娠に至らない場合は、女性だけではなく男性も一緒に検査を受けるようにしてください。
市販の簡易精子検査キットで簡単に精液検査ができる
さて、自分の精子の状態の検査を受けたいと思った場合は、基本は病院やクリニックに行って検査を受けることになります。
特に、もうすでに妊活を始めて1年以上経っている、女性も不妊クリニック等で検査を始める場合は、一緒に病院やクリニック等で検査を受けてください。
ただ、そうではなく、まだこれから妊活をスタートしようしているタイミングや、妊活をスタートしてまだ数か月などの場合は、まずは簡易の精子検査キットで検査してみるというのも一つの方法です。
市販の精子の検査キットはネットやドラックストア等で簡単に購入することが出来ます。
ネットでは6種類ほどあり、価格は1000円台~8000円台と幅広くあります。(2020年9月現在)
キットでの検査方法は採取した精液を見るだけのもの、スマホのカメラで確認するもの、スマホのアプリで分析してくれるもの、検査機関に郵送して検査してくれるものまで、様々です。
中には動画データを送付することで、オンラインで男性不妊専門の泌尿器科医の診断を受けることが出来るものもあります。
検査可能な内容はキットによって違いますが、精子がいるかいないのかのレベルであればどのキットでも確認が可能です。
精子濃度や運動率、精子形態について知りたい場合は、それらの検査が可能なキットを選ぶ必要があります。
市販の精液検査キットを使う場合の注意点
検査の流れに関しては、キット内の説明書をまずはしっかりと読んでから検査をするようにしましょう。
キットに精液の採取容器や採取キットがついているかどうか、自分で用意しなければならないのかどうかも最初に確認しておきましょう。
また、コンドームでの採取は出来ません。コンドーム内では精子が死滅するように薬品などが塗布されている事があるからです。
必ずキットについている専用容器か自分で用意した容器に採取するようにしましょう。
精液を採取後は、説明書に従い速やかに検査に入りましょう。
特に運動率を確認する検査は、時間とともに精子の運動率が低下していきますので、採取後出来るだけ早めに検査をする必要があります。
検体を送付する場合も、当日若しくは翌日の早い段階に送付するようにしてください。
しかし、あくまでも検査キットによる精液検査は簡易のものです。
検査機関に輸送したり、医師のオンライン診療を受けていてもすべての検査項目が足りているわけではありません。
簡易検査キットでの検査で満足するのではなく、妊娠を望んでから半年から1年たっても妊娠しない場合は病院で検査を受ける必要があります。
また、検査キットの結果が良くなかった場合は、一度男性不妊専門医のいる不妊専門クリニックや泌尿器科で検査と診察を受けるようにしてください。
病院で精液検査を受ける場合の注意点
妊活をスタートして半年から1年以上経過している場合や、年齢が35歳以上の場合は、簡易キットでの検査ではなく、最初から病院で検査を受けることをお勧めします。
病院で検査を受ける場合は男性不妊の専門医のいる泌尿器科か不妊治療をしている産婦人科、もしくは不妊専門クリニックで受けることになります。
不妊専門クリニックであればほとんどの場合、精液検査に対応していますが、一般産婦人科や泌尿器科では対応していない場合もありますので、事前に確認しておくことが必要です。
また、受診した日に検査が可能なのか、改めて検査日を指定されるのか、自宅採取が必要なのかもあらかじめ確認しておきましょう。
精液検査に関しては保険適用のクリニックと自費診療のクリニックとありますが、自費診療の場合、金額は5000円から8000円ぐらいの間に収まる事がほとんどのようです。
精液検査では、精液の量、精子の数と濃度、運動率、精子の質を中心に確認していきますが、自費診療か保険適用かによって検査項目に違いが出てきます。
精子の状態はその時の体調などによっても変化するため、結果があまりよくなかった場合は何度か検査を行うこともあります。
また精液検査の結果があまり芳しくなかった場合は、男性不妊専門医のいるクリニックでさらに詳しい検査を受けることが必要です。
不妊は決して女性だけの問題ではありません。なかなか子供を授からないな…と思ったらまずは二人で検査を受けるようにしましょう。