体外受精のこわ〜いリスク!薬や麻酔の影響、母体への負担は?

体外受精にステップアップする時に気になるのは費用のことだけではありません。排卵誘発剤の使用や採卵手術など身体への負担も気になる点です。
この記事では、体外受精でのリスクや身体への負担について解説していきます。

この記事の監修医師

体外受精のリスク、身体への影響は?

体外受精の時に気になることの一つが身体への負担です。インターネットなどで調べると様々な情報が出てくるため、ステップアップに関して必要以上に不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、体外受精は40年以上行われている治療であり、十分に安全性が確立された治療方法です。もちろん薬を使用したり、採卵手術を行ったりするため、身体への負担がまったくないというわけにはいきませんが、必要以上に不安になる必要はありません。

ここでは体外受精の時に考えられる 5つの身体へのリスクについて説明していきます。

1. 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスク

体外受精のリスクと言われると、最初にあがってくることが多いのがこの卵巣過剰刺激症候群(OHSS)です。

卵巣過剰刺激症候群は、排卵誘発剤の影響により、多くの卵胞が一度に発育してしまい、卵巣が腫れる状態を言います。

最初の症状はお腹の腫れを感じる腹部膨満ですが、この卵巣過剰刺激症候群が進行していくと、お腹に腹水が溜まったり、さらに酷くなると、胸に水が溜まり、呼吸がしにくくなったり、血栓が出来たりして命に係わる場合もあります。

症状が酷い場合は、絶対安静が必要になり、入院が必要になることも少なくありません。
卵巣過剰刺激症候群は、多嚢胞性卵巣症候群の女性や、年齢が若く多くの卵胞が発育しやすい女性に起こりやすいと言われています。

排卵誘発剤を使用する際は、多嚢胞性卵巣症候群の有無やAMHの値を確認してから、慎重に排卵誘発を行っていきます。
また、卵巣過剰刺激症候群のリスクが高まった場合は、排卵誘発や採卵を中止することもあります。

卵巣過剰刺激症候群に関して、必要以上に不安にならなくても大丈夫ですが、多嚢胞性卵巣症候群の場合や、AMHの値が高い場合は、医師から卵巣過剰刺激症候群への対応について事前にきちんと話を聞いておくことが必要です。
医師の対応に不安を感じたら、別のクリニックで体外受精にステップアップすることも考えておきましょう。

また、排卵誘発中にお腹の痛み呼吸のしにくさ酷い頭痛を感じた場合は、自分で判断をしないで、すぐにクリニックに電話して医師の指示を仰ぐことが大切です。

2. 採卵時の痛みと麻酔のリスク

体外受精の採卵は膣から長い針を入れて、その針を卵巣に刺して採卵していきます。
採卵個数が少ない場合は無麻酔で行うことも可能ですが、採卵個数が多い場合は針を刺す作業を何度も繰り返すことになるため、麻酔をすることをお勧めします。

クリニックによって方針は様々ですが、静脈麻酔局所麻酔を行って採卵をすることもできます。
体外受精のクリニックを選ぶ際は、採卵時に麻酔が可能かどうかも事前に確認しておきましょう。

静脈麻酔の場合は「気が付けば採卵が終わってベッドで休んでいた」という状態で、ほとんどの方が痛みを感じることなく採卵を終えることが出来ます。

麻酔の副作用としては、嘔気嘔吐のほかにも、呼吸抑制血圧低下徐脈などの重篤な副作用が起こることもあります。それ以外にも、めまいやふらつき、痙攣などを引き起こす場合もあります。

人によっては麻酔から覚めた後も、気分の悪さやふらつきなどが残る場合もあります。
また、腹部の鈍い痛みを感じることもあります。

採卵後は、2時間ほど休んだ後は仕事に行く人もいますが、初めての採卵の時は採卵後の状態がわからないので、お仕事は1日休めるようにしておくことをお勧めします。

採卵後、膣壁からの出血や、腹腔内の出血、骨盤内の感染が起こることもありますが、処置が必要になる場合は、0.1%以下と非常にまれです。
ただ、そのようなリスクがあることも事前にきちんと説明してくれるクリニックで治療を受けられる方がいいかと思います。

3. 双子や三つ子が生まれる「多胎妊娠」のリスク

不妊治療をしていると、双子や三つ子などの多胎妊娠が増えるという話を耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか?

確かに、体外受精を行った場合は自然妊娠よりわずかながら多胎妊娠率が上がるというデータもあります。しかし、そこまで双子や三つ子の可能性は高くありません。
現在の治療ではそれらのリスクを回避するためさまざまな方法をとっています。

たとえば、タイミング治療や人工授精で排卵誘発剤により複数の卵胞が育った場合は、双子や三つ子の可能性が高くなります
なので、複数排卵しそうな卵胞があり三つ子以上の可能性が高くなる場合は、母体への負担も考えてその周期の人工授精を中止したり、避妊するように医師から指示されることがあります

排卵しそうな卵胞が2つの場合は、医師と相談の上で双子も了承のうえ、治療を継続するか、その周期はお休みにするかの判断を行います。

体外受精を行う場合は、一度育った卵子を全て採卵してから移植し、移植する胚の個数も原則1個と決められているため、そこまで多胎妊娠の可能性は高くありません。

しかし、1個の胚移植ではなかなか妊娠に至らない時は、2段階胚移植*同時に胚を2個胚移植することもあります。このような移植方法を選択した場合は双子の可能性が上がります。

*2段階移植とは、年齢や胚移植の回数など一定の条件を満たした場合に2回にわけて胚を2個戻すことを言います。

多胎妊娠は母体への負担も大きく、その後の育児の負担もあるためこういったリスクがあることは事前に知っておく必要があります。

4. 体外受精による妊娠・出産へのリスク

体外受精で妊娠した場合、妊娠中や出産のリスクがあがるという話を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか?

一概に体外受精が原因とは言えませんが、初期の流産や子宮外妊娠、前置胎盤などは自然妊娠より体外受精の方が多いとも言われています。
実際に、子宮外妊娠や前置胎盤は、胚移植の操作が影響している可能性もあるのではないかと考えられています。

しかしこれは、体外受精を受ける患者の平均年齢が高いこと子宮筋腫などの婦人科疾患を併せ持っている確率が高いことも原因の一つとなっていると考えられます。

厚生労働省が示した妊娠リスクスコアでは、体外受精や排卵誘発剤での妊娠はリスクありの点数がつくことになります。
他にも年齢や体重などによってリスク点数が加算されることになり、産科によっては妊娠リスクスコアの点数が高いと、出産予約が取れないこともあります。

出産を考えているクリニックが決まっている場合は、この妊娠リスクスコアを導入しているかどうかを事前に確認しておいたほうがいいでしょう。

ただ体外受精での妊娠だからと必要以上に不安になるのは、ストレスにもなりますのであまりお勧めしません。
あくまでも、一つのリスクとして知っておくぐらいがいいかと思います。

5. がんへのリスク

体外受精の場合、排卵誘発剤を使用することからがんへのリスクを心配される方も少なくありませんが、特に心配する必要はありません。

海外でのデータになりますが、経過観察期間は長くはないものの現時点では卵巣がんも乳がんも、体外受精を行ったグループとそうでないグループでの有意差はないというデータが出ています。

ただ、不妊治療中の人の中には卵巣がんなどのリスクがあがる婦人科疾患がある人もいます。
そのような場合は、体外受精を行った、行っていないにかかわらず、定期的に婦人科でチェックを受けることが必要です。

また、長期間にわたり排卵誘発剤を使用していたからと不安がある場合も、婦人科で確認してもらうのも一つの方法です。


いかがでしたでしょうか?
インターネットで体外受精について調べると、様々な情報が出てきて不安に感じる人も少なくないかと思います。ただ、それらの情報を鵜呑みにして、体外受精へのステップアップを躊躇している間にも年数が過ぎ、妊娠率も下がってきます。

不安な事は、通院しているクリニックで医師に確認したり、体外受精説明会などで質問したりして解決していくようにしてみてはどうでしょうか。

参考書籍
今すぐ知りたい 不妊治療Q&A 医学書院

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