妊活を始める前に打つべき予防接種とは。妊娠中に感染したらどうなる?

 

麻しん(はしか)、風しん、水痘(水ぼうそう)、おたふくかぜ
みなさんワクチン接種は済んでいますか?
もしくは子供の頃にかかったことはありますか?

このような質問をした場合、一定数の方が首を傾げられます。
母子手帳を確認してみます、親に聞いてみます…と言われる方もいらっしゃいますが、母子手帳が残っていない、親も記憶がない…なんて方もいます。

「妊活の話になぜ予防接種?」と思われる方もいるかもしれませんが、妊娠時や産後は出来るだけ感染症にはかかりたくありません。
そして、その中にはワクチンで防ぐことが出来る感染症もあるのです。

今回は妊活を始める前に確認しておきたい予防接種についてお伝えしていきたいと思います。

妊娠中に感染すると危険な感染症

妊娠中に感染すると、お腹の中の赤ちゃんに異常が出たり、流産や早産のリスクのあがる感染症があります。
その中でも、麻しん、風しん、水痘、おたふくかぜはワクチンで予防が可能な感染症です。

これらの感染症に妊娠中にかかると、どのような影響があるのでしょうか?

麻しん

妊娠中に麻しんにかかると、流産や早産のリスクがあがると言われています。
また、妊婦が麻しんにかかると、非妊婦よりも重症化しやすいと言われています。

2015年の3月に日本はWHOより麻しんの排他状態にあると認定されています。
しかし、その後も海外から持ち込まれたり、持ち帰ったりして、国内での感染者が確認されています。
また、2019年の1月から5月の期間に、大阪、東京、三重を中心に多数の感染者を出したことを覚えている人も多いかもしれません。

麻しんワクチンは1978年10月生まれ以降の人は定期接種が開始されていますが、2000年4月生まれまでは1回接種だったため、十分な抗体が体内で作られていない可能性がある人もいます。

妊活世代は2000年以前の生まれの人がほとんどだと思いますので、麻しんにかかった記録や記憶がない人、1回接種の記録しかない場合は、妊活前に2回目の接種をすませておきましょう。

風しん

‟先天性風しん症候群″という言葉を聞いたことがある人も多いかもしれません。
妊娠初期に風しんにかかると先天性風しん症候群の発生がとくに高くなると言われています。(妊娠4-6週で100%、7-12週で80%、13-16週で45-50%、17-20週で6%、20週以降で0% )

先天性風しん症候群とは、母親が風しんに感染することで胎児に発生する病気になります。
症状として頻度が高いのは、難聴・白内障・先天性心疾患になります。
それ以外にも、網膜症、肝脾腫、血小板減少、糖尿病、発育遅滞、精神発達遅滞、小眼球などがあります。

2012年から2013年にかけて、全国で風しんの大規模発生が起こり、この流行の影響で2013年から2014年にかけて45名の先天性風しん症候群の患者が発生しています。
その後もここまでの流行は起こっていませんが、毎年100件から300件ほどの風しん患者が発生しています。

風しんワクチンの歴史は古く、1962年4月生まれ以降の女性に対して定期接種が行われています。ただ、麻しんワクチンと同様で、最初は1回接種や個人接種だったため、2回接種の接種率は低く、定期接種で2回以上接種を受けているのは2000年生まれ以降になります。

麻しん同様、妊活世代は2000年以前の生まれの人がほとんどだと思いますので、風しんにかかった記録や記憶がない人、1回接種の記録しかない場合は、妊活前に2回目の接種をすませておきましょう。

水痘(水ぼうそう)

こちらは妊娠中の感染の話をあまり耳にしたことがないかもしれませんが、妊娠中期に水痘にかかると、2%の割合で先天性水痘症候群を発生する可能性があります。

先天性水痘症候群になると、赤ちゃんに四肢低形成(手足の形成が不良)、脈絡網膜炎(目の膜の炎症)、小頭症発達障害などの症状が現れます
また妊娠中に水痘にかかると重症化しやすく、特に出産5日前から出産後2日までに妊婦が感染すると赤ちゃんも重症な水痘を発症する可能性が高くなります。

水痘ワクチンは2014年10月から定期接種の対象ワクチンとなりました。
その為多くの世代は、任意でワクチンを接種したか、水痘にかかっていないと抗体を持っていないことになります。
水痘にかかった記録や記憶がない人、ワクチン接種の記録がない人は、妊活前に予防接種を受けておきましょう。

おたふくかぜ

こちらも水痘同様に、あまり妊娠中の感染については話題にあがりませんが、妊娠初期の感染で流産率があがることが知られています。

おたふくかぜのワクチンは任意接種のため、任意でワクチンを接種したか、おたふくかぜにかかっていないと抗体を持っていないことになります。
おたふくかぜにかかった記録や記憶がない人、ワクチン接種の記録がない人は、妊活前に予防接種を受けておきましょう。

予防接種を受けた記憶もかかった記憶もない場合はどうしたらいいの?

まずは、ご両親に母子手帳を確認してもらいましょう。予防接種を受けたり、小さな頃に感染していた場合は記録されている可能性もあります。

とはいえ、母子手帳はみつからないし、記憶も定かではないという人もいるかと思います。
その場合は、抗体があるかどうか血液検査で確認する方法もありますが、確認しないでワクチンを接種しても問題ありません。

ただその場合、すべての費用が自費となりそれなりの費用がかかります。
すべてのワクチンを接種できるのが理想ですが、まずは最低限、風しんと麻しんのワクチンだけでも先に打っておくことをお勧めします。

また、これらのワクチン未接種の状態で、風しんや麻しん、おたふくかぜや水痘が流行した場合は、流行している地域には極力近寄らない、どうしてもその方面に行く必要がある場合は、人混みはさけるなどの注意が必要です。

妊娠時に感染症の流行におびえなくてもいいように、少し費用はかかりますが、接種歴や罹患歴が不安な場合はワクチンを打っておくことをお勧めします。

男性側の予防接種履歴も確認して

男性の風しんワクチンに関しては、現在厚生労働省が、風しんの追加対策として1962年4月2日~1979年4月1日生まれの男性に対して、地域の自治体から、原則無料で風しんの抗体検査と予防接種を受けられるクーポンが、2019年から2021年の3年間かけて随時送られています。

このクーポンがあれば、原則無料で検査やワクチン接種が可能になりますので、パートナーのもとに届いていれば、まずは抗体検査を受けてもらいましょう。
この抗体検査は企業健診の中でも実施が可能な場合もありますので、一度お勤めの会社に確認してみてください。

風しんワクチンは1962(昭和37)年4月2日-1979(昭和54)年4月1日生まれまでは女性のみに接種されており、男性への接種が行われていませんでした。
その為、現在追加接種の対応がとられているのです。

ただ、その後の世代も個別接種のため、すべての人が接種しているわけではありません。
風しんだけではなく、麻疹も水痘もおたふくかぜも一度ワクチン接種歴や罹患歴を確認し、もし抗体を持っていないようでしたら、ワクチンの接種を検討してみてください。

女性がワクチン接種をしていれば男性はしなくても大丈夫ではないか?という意見もあります。

ただ、小児のMRワクチン(麻しん・風しん)は生後1年からになります。
お母さんからもらった免疫は生後半年ぐらいで無くなってしまうため、それからワクチンを打つまでの半年間は赤ちゃんは感染症に弱い状態になります。
その時期に抗体を持たない男性が罹患してしまうと、赤ちゃんまで感染してしまうリスクがあがります。
妊活や不妊治療後に産まれて来る赤ちゃんの為に、男性もしっかりと抗体をつけておくことが必要です。

また社会全体で見た場合には、まれにですが副反応等の影響でワクチンが接種出来ない女性がいます。そのような女性が妊娠中に、麻しんや風しんが流行すると外に出ることがリスクになってしまいます。
しかし、ほとんどの人がワクチン接種をしたり罹患して抗体を持っておくことで、麻しんや風しんの流行を押さえられ、結果的にワクチンを接種出来ない女性やそのお腹の赤ちゃんを守ることが出来ます。

ぜひこれを機に男性の予防接種履歴も確認してみてください。

インフルエンザワクチンは妊娠中でも接種が可能

インフルエンザワクチンは、流行シーズンに入ると毎年接種するワクチンになります。
特に、妊活・不妊治療中、妊娠中の方はワクチン接種が始まったら早めに接種するようにしましょう。

妊娠中にインフルエンザにかかると、妊婦は非妊婦より重症化しやすいと言われています。また、流産や早産のリスクもあがると言われています。
インフルエンザワクチンを接種しても、罹患を完全に防ぐことはできませんが、重症化を防ぐと言われています。

ワクチンにプラスしてインフルエンザ流行時期は極力人混みを避ける、手洗い・うがいを徹底するなどの対策も忘れずに行いましょう。

*予防接種に関しては、体調や病気の状態、過去の既往歴によっては接種することが出来ない場合や接種を慎重に行わなければならない場合があります。
必ず不安な点や疑問点は医師に確認したうえで、予防接種を受けるかどうか判断してください。

 

参考資料
こどもとおとなのワクチンサイト
国立感染症研究所HP
厚生労働省HP 風疹について
厚生労働省HP 水痘について
厚生労働省HP 風疹の追加対策について
東京都感染情報センター

 

この記事の監修医師
菊地 盤(きくち いわほ)
産婦人科専門医/生殖医学会生殖専門医
順天堂大学医学部卒業。順天堂大学産婦人科先任准教授(助教授)、順天堂大学医学部附属浦安病院リプロダクションセンター長を経て、2019年よりメディカルパーク横浜の院長を務める。順天堂大学浦安病院在籍時には、世界で初めて市(浦安市)と提携し「卵子凍結」プロジェクトの責任者として、女性の妊孕性温存に携わる。

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