これまで、不妊検査について4つの記事にわけてお伝えしてきました。
- 【不妊検査】最初に行われる不妊スクリーニング検査の流れと注意点(女性編)
- 卵管造影検査を受けるタイミングはいつ?検査は痛い?
- 不妊治療中にも追加で検査が必要!その理由とは?(女性編)
- 不妊症の原因の半分は男性!男性不妊検査って何するの?
これらの記事を見て、「色々な検査があるけど、いったいどのタイミングで検査を受けたらいいの?」と思われた方もいるかもしれません。
この記事では検査を受けるタイミングについてお伝えしていきたいと思います。
一つの目安として、検査が行われるのは次のようなタイミングになります。
- 最初にクリニックを受診したタイミング
- スクリーニング検査の結果や精液検査の結果に問題があり追加検査が必要と医師が判断した場合
- 流産や死産を経験した後、流産や死産を繰り返した時
- 体外受精(良好な胚の移植)を何度か繰り返しても着床しない時や妊娠に至らない時
- 医師から追加検査を打診された時
この記事の監修医師
産婦人科専門医 / 生殖医学会生殖専門医
順天堂大学医学部産婦人科客員准教授
順天堂大学医学部卒業。順天堂大学産婦人科先任准教授(助教授)、順天堂大学医学部附属浦安病院リプロダクションセンター長を歴任。世界初となる公費助成の「卵子凍結保存プロジェクト(千葉県浦安市)」の責任者。2019年メディカルパーク横浜を開院。
最初にクリニックを受診したタイミングで受けておきたい検査
最初にクリニックを受診したタイミングで受けておいてほしい検査は、以下の3つです。
・女性のスクリーニング検査(ホルモン検査、超音波検査等)
・男性の精液検査
・卵管造影検査
一般婦人科などの不妊相談を受診した場合は、十分な検査がなくそのままタイミング治療が行われることがありますので、最初にしっかりと上の3つの検査が可能なクリニックを受診しましょう。
クリニック予約時に、女性のスクリーニング検査、男性の精液検査、卵管造影検査が可能かどうか確認してから受診されることをお勧めします。
また、タイミングが合わないなどの理由で男性の精液検査が後回しになるカップルもいますが、女性の検査には最低でも1~2周期ほどはかかります。2ヶ月ほど期間があるので、その間に都合をつけて男性も一緒に検査を受けるようにしましょう。
女性がクリニックに通院しだして半年、1年後にようやく精液検査を受けるという方もいますが、その時に精液検査の結果に異常があった場合、そこまでに費やした時間やお金は戻ってきません。
時間もお金も無駄にしないためにも、必ず男性も同じタイミングで、クリニックで精液検査を受けるようにしてください。
なかには、市販の精液検査キットで検査をしたから大丈夫と思われている方もいますが、市販の精液検査キットは病院での精液検査の代わりにはなりませんので、必ずクリニックで検査を受けるようにしてください。
同様な理由で、卵管造影検査も最初の受診のタイミングで受けることをお勧めします。
クリニックによっては検査予約待ちになることもありますが、出来るだけ早いタイミングで検査が受けられるように予約を入れておきましょう。
両方の卵管が詰まっていたり狭窄している場合は、自然妊娠が難しくなります。そんな状況で半年や1年、タイミング治療や人工授精に時間を費やすことは避けたいものです。
そして可能であればAMH検査も早いタイミングで受けておきたい検査の一つです。
AMHが低いからと言って即体外受精が必要なわけではありません。
しかし、AMHの値によってはゆっくりと治療を進めている余裕がない場合もあります。
AMHの値は、他のホルモンの値も考慮に入れながら、今後の治療の進め方をどうするのかを考える一つの指標になりますので、最初にクリニックを受診したタイミングで検査を受けておくことをお勧めします。
医師からの指示で追加検査を行う場合
最初のスクリーニング検査で何か異常があった場合や、精液検査の結果があまり良くなかった場合は、基本的には医師の判断でより詳しい検査が行われることになります。
この場合、本来であれば患者から何らかしらの行動を起こす必要はありません。
ただし精液検査に関しては、男性不妊検査の記事でも書きましたが、必ずしも医師から追加の検査の打診がされるわけではありません。
クリニックによってはそのまま体外受精へのステップアップを促されることが往々にしてあります。
そのような場合は、医師に相談して男性不妊の専門医師を紹介してもらうか、もしくは個人で男性不妊専門の医師を探して受診して、より詳細な検査を受けましょう。
もちろん、そのまま体外受精にステップアップして妊娠する場合もありますが、精索静脈瘤などの明らかな原因がある場合はそれらをまず治療することをお勧めします。
治療によって、精液所見の改善が期待できるのみならず、もし体外受精などにステップアップしたとしても、その後の妊娠率に影響するからです。
場合によっては体外受精にステップアップしなくても、タイミング治療や人工授精で妊娠が可能な場合もあります。
基本的にはスクリーニング検査や精液検査の結果に問題があった場合は、医師から追加の検査の案内がされますが、精液検査に関しては追加検査ではなくステップアップの打診がある場合もありますので少し注意が必要です。
受けたい検査が行われているか事前にチェックが必要なことも
着床に関する検査は、体外受精にステップアップし、良好胚を何度か移植したにも関わらず妊娠に至らない場合に行うことが多い検査です。
ただしこの着床に関する検査はクリニックによって扱いも検査項目も様々です。
検査項目としては、
・子宮内膜炎検査
・子宮内フローラ検査
・EMMA検査
・ALICE検査
・ERA検査(着床の窓)
・ビタミンD測定
・Th1/Th2検査
・銅・亜鉛検査
などがあります。
ただし、「着床検査を実施しています」とHPに記載があってもこれらすべての検査が実施されているとは限りません。この中からいくつかの検査のみを実施しているというクリニックもあります。
また、医師から早い段階でこれらの着床に関する検査の提案があるクリニックもあれば、質問してみて初めてその検査について説明があるクリニックもあります。
また、着床に関する検査は実施していないというクリニックもあります。
必要に応じてこれらの検査を受けたいと考えている場合は、事前に着床に関してはどのような検査項目が実施可能か調べてからクリニックを選ぶ必要があります。
HPに記載のない場合は、クリニックに直接確認してみましょう。
体外受精を受ける場合は、多くのクリニックで事前の体外受精説明会を受講することを義務付けていますので、そのような場で確認するのも一つの方法です。
また、クリニックによっては診療時間以外に培養士やカウンセラーに相談できる時間が設けてあるクリニックもあります。説明会で質問しにくい場合は、そのような場で聞いてみるのも一つの方法です。
後から検査だけ受けたいとなった時に、通っているクリニックで検査を実施していない場合、検査だけ別のクリニックで受けるか、転院が必要になってきます。
最近は、検査だけの受診をお断りしているクリニックもみかけるようになってきましたので、そうなると転院が必須になってきます。
もちろん転院も一つの選択肢ですが、新しいクリニックに移るのはそれなりの負担がかかりますので、出来れば同じクリニックで不妊治療を続けられる方が負担が少なくて済みます。
また、精子のDNAの断片化の割合(精子DNAの損傷割合)を調べる検査や、酸化ストレスの割合を調べる検査もすべてのクリニックで行われているわけではありません。
これらの検査を受けたい場合も事前に実施しているクリニックを調べて、そのクリニックを受診する必要があります。
後々、それらの検査を受けたいと思ってもそれらの検査を実施しているクリニックでないと受けることが出来ませんのであらかじめ調べておく必要があります。
このように不妊に関する検査といっても、受けるタイミングは様々であり、全ての検査が必ずしも行われていません。
検査の項目によっては選んだクリニックによって扱いがあったり、なかったりですので注意が必要になってきます。
PGT-A検査(着床前胚染色体異数性検査)と流産・死産を繰り返した場合の検査(不育症検査)についてはまた別記事でお伝えしていきたいと思います。