不妊の原因になり得る、「排卵障害」とは?

排卵について何回かにわけて掲載してきましたが、不妊の原因の一つに排卵がうまくおこらない「排卵障害」があります。

排卵は妊娠のための最初のステップになり、排卵がうまくおこらないとその先に進むことが出来ません。
今回はこの「排卵障害」についてお伝えしていきたいと思います。

排卵の仕組み

そもそも排卵はどのようにしておこるのでしょうか?

女性の卵子は胎児期(6か月)の時が最も多く、その後は増えることなく減り続けます。
胎児期に出来あがった卵子は「原子卵胞」と呼ばれる状態で卵巣内に存在します。
原子卵胞から約1年かけて排卵直前の卵胞まで成長します。

少し難しい話になりますが、これらの卵胞が成長、排卵するまでにはいくつかのホルモンが関与することになります。

視床下部で生成されるゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)が分泌刺激により下垂体門脈に分泌されます。
下垂体門脈から下垂体前葉に分泌されたGnRHによって、下垂体前葉から黄体化ホルモン(LH)及び卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌が起こります。
そして、下垂体から分泌された卵胞刺激ホルモン(FSH)の刺激により、卵巣内の卵胞が成熟していきます。
排卵時に起こるホルモンの流れは少し難しいので省略しますが、最終的には下垂体から黄体化ホルモン(LH)の大量放出が起こり、卵胞が破裂して排卵が起こります。

このように様々なホルモンが関与して、毎月の排卵が起こっています。
その為、ホルモンの些細な乱れが排卵に影響を及ぼしてくるのです。
ストレスで生理が乱れたり、止まったりするのもこれらのホルモンが関与しています。

排卵障害の原因となるもの

排卵がうまくいかないのには様々な要因が考えられます。
たくさんある原因の中でもよく耳にするものをいくつか紹介したいと思います。

ホルモンの分泌障害

ホルモンの分泌を指令する、視床下部や脳下垂体、卵巣などで異常が起こるとホルモンがうまく分泌されずに排卵障害や無月経を引き起こします。
ホルモンの分泌障害は器質的な場合から、ストレスや低体重など原因は様々です。
治療方法としては排卵誘発剤を使用し、排卵を起こしていきます。と、同時に低体重の改善やストレスを取り除いていく必要があります。

高プロラクチン血症

授乳中でもないのに、乳首からおっぱいがにじみ出るような場合は、高プロラクチン血症が疑われる場合があります。
高プロラクチン血症は血液検査でプロラクチンの値を測定することでわかります。
薬剤性など様々な要因があげられますが、原因不明であることも少なくありません。
ただ、まれに下垂体に腫瘍ができていてその影響でプロラクチンが高値になる場合もあります。
高プロラクチン血症は排卵障害や黄体機能不全などに直結し、不妊の原因にもなります。
乳汁分泌がみられる場合はまず医師に相談しましょう。

甲状腺異常

甲状腺ホルモンは卵巣における卵胞発育・受精、胚発育や子宮内膜の着床など、妊娠にかかわる様々な要素に関与しており、甲状腺機能低下症はこれらに影響し、女性の妊孕性を低下させる可能性があると言われています。
甲状腺異常は血液検査で確認することが出来ます。また不妊クリニックによっては最初の一般検査に含まれている場合もありますが、気になる場合は一度医師に確認してみましょう。

早発卵巣不全

早発卵巣不全とは40歳未満で閉経状態となり、卵巣機能がほとんど消滅してしまう状態の事をいいます。医原性(外科的処置や化学療法剤や放射線治療などによるもの)の場合は、卵巣機能が消滅してしまうリスクを事前に伝えられることが多いですが、それ以外の原因(遺伝的 先天的)の場合は、不妊クリニックの検査などで突然早発卵巣不全を告げられることも少なくありません。
検査で早発卵巣不全の可能性を告げられた時は、医師とどのように治療を進めていくか相談してできるだけ早く治療をスタートさせることが望ましいです。

体重と排卵障害の関係

妊活においてはやせすぎも、太りすぎもよくありません。どちらにおいてもうまく排卵が起こらなくなったり、排卵しても卵子の質が低下したりする可能性が危惧されています。

アメリカでの女性看護師を対象にした疫学調査の結果(The Nurses‘ Health Study Ⅱ‘‘)によると、不妊症のリスクが低くなるBMIの値は20~24であり、最も理想的なBMIは21と記されています。

160㎝の女性の場合、52㎏~61kgがちょうどBMI20~24の間の数値になります。
重いと感じられましたか?どうでしょうか?
みなさんのBMIはどれぐらいでしょうか?
ぜひ一度計算してみてください。

【スマホの計算機アプリで計算する方法】
体重(kg)÷ 身長(m)÷ 身長(m)

モデルさんなどが公表している身長や体重を例に挙げて説明してみたいと思います。
例えば「160㎝ 43㎏」の場合だと、BMIは16.8となります。この数値の場合、やせすぎで生理が止まってしまう可能性もあります。
日本の女性はやせ志向が強いと言われていますが、子供を望むのであれば、体重が増えにくい体質の人もいるかもしれませんが、できる限り適正体重に近づけておくほうがベストです。

また、低体重で月経が不規則、数か月に1回しか生理が来ないなどの場合は、早めに婦人科もしくは不妊専門クリニックを受診するのと同時に少し体重を増やす努力が必要になってきます。
ただ、特にダイエットもしていないのに急に体重が減少した場合などは病気が隠れている可能性もありますから、自己判断は禁物です。
出来るだけ早めに医師に相談をしてください。

そしてもう一つ問題になるのが過体重です。
こちらはどちらかというと、ダイエットしなきゃと意識している女性も少なくないかと思います。

特にBMI27以上(160cmの場合だと69㎏以上)で排卵障害が起こりやすいと言われています。
医師によっては過体重の場合、体外受精にステップアップする前にダイエットを進める医師もいると聞きます。

不妊クリニックなどでは管理栄養士の食事指導やアドバイスが受けられるクリニックもあります。体重のコントロールが必要な場合はそういうクリニックで相談するのも一つの方法です。

ただ、まれに内分泌疾患(ホルモンの病気)等が原因で太ることがあります。食事をコントロールしても、運動をしても体重が一向に減少しないという場合は、一度医師に相談してみた方がいいでしょう。

とはいえ無茶なダイエットは禁物です。3食バランスよく食べるように心がけながら、少しずつ運動も取り入れていきましょう。
食事などの生活習慣の話についてはまた別の記事で詳しくお話していきます。

ストレスと排卵障害

「仕事のストレスで生理が止まった」という話を周りで耳にしたことはありませんか?
ストレスが生理に影響を及ぼすという話はよく伺う話の一つです。

とはいえ、ストレス度合いは数値で測ることが出来ません。
同じ仕事の量でもあっても、それをストレスに感じる人、そうでない人と様々です。

また、ストレスは嫌なことや苦痛なことだけがストレスなのではありません。
結婚や引っ越し、転職など生活の大きな変化もストレスになります。
突然、生理が来なくなった、周期が乱れ始めたという場合は、何かストレスになるような出来事がなかったか一度振り返ってみましょう。

特に結婚前後はあわただしくなりがちです。
忙しい日々を過ごしていたり、新しい生活に頑張りすぎていたりするときは、ちょっと立ち止まって一息つくことも大切です。

ただ何か月も生理が止まったままにしておくことはあまりお勧めできませんので、このような状態が続く場合は医師の診察を受けてください。(菊池先生 受診目安期間がありましたら追記お願いします 笛吹)

きちんと排卵が起こっているかどうかを確認する目安の一つに基礎体温(基礎体温の記事リンク)や月経周期を確認する方法があります。
基礎体温や月経周期だけですべてがわかるわけではありませんが、最初に自分の身体の状態を知る一つの目安になりますので、妊活中の女性は一度確認してみてください。

 

この記事の監修医師
菊地 盤(きくち いわほ)
産婦人科専門医/生殖医学会生殖専門医
順天堂大学医学部卒業。順天堂大学産婦人科先任准教授(助教授)、順天堂大学医学部附属浦安病院リプロダクションセンター長を経て、2019年よりメディカルパーク横浜の院長を務める。順天堂大学浦安病院在籍時には、世界で初めて市(浦安市)と提携し「卵子凍結」プロジェクトの責任者として、女性の妊孕性温存に携わる。

参考:データから考える 不妊症・不育症治療 第1版 (株)メディカルビュー社
MSDマニュアルプロフェッショナル版

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