「妊活を始めよう。でも一体、何から始めたらいいの?」そう思われる方も多いのでは?
もちろん、難しく考えずパートナーと性交渉を繰り返していたらいつのまにか妊娠したという人もいます。
でも、5.5組に1組の夫婦が不妊に悩む今、できれば遠回りしないで妊活を進めたいという気持ちもよくわかります。
今回はそんな妊活を始めるときの進め方についてお伝えしていきます。
この記事の監修医師
産婦人科専門医 / 生殖医学会生殖専門医
順天堂大学医学部産婦人科客員准教授
順天堂大学医学部卒業。順天堂大学産婦人科先任准教授(助教授)、順天堂大学医学部附属浦安病院リプロダクションセンター長を歴任。世界初となる公費助成の「卵子凍結保存プロジェクト(千葉県浦安市)」の責任者。2019年メディカルパーク横浜を開院。
妊活を始める前に!チェックしたい5つのポイント
妊活を始めるとき、最初に必ずチェックしてほしいポイントがあります。
それが次の5つです。
・年齢
・生理周期
・生理痛の有無
・婦人科系の疾患の有無
・基礎体温
これらの5つのポイントについて一つずつ説明していきたいと思います。
年齢
「不妊」とは、‟妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、1年間妊娠しないものをいう”と日本産婦人科学会で定義されています。
この1年という期間は広く知られており、まずは自己流の妊活を1年頑張ってみようと思われる人も多いかと思います。
しかし、年齢によっては自己流の妊活を1年も続けるのは長いかもしれません。
明確な基準はありませんが、32歳ぐらいまでなら1年ほど自己流の妊活を続けても良いかと思います。
しかし、妊娠率が下がってくる33歳以上であれば自己流の妊活は半年程度にして、早期に不妊クリニックの受診を考えましょう。
もしあなたが40歳以上であれば、妊娠を望んだ時点でまずは不妊専門クリニックを受診し検査を受けることをお勧めします。
こういう話をすると、しっかりと年齢で区切ろうとされる方もいらっしゃいますが、33歳、34歳ぐらいであれば1年を待たずに、38歳、39歳であれば半年を待たずに不妊専門クリニックを受診し検査を受けるのも一つの方法です。
“1年”という数字にとらわれることなく、ご自身の年齢で考えてみてください。
生理周期
生理周期に関してはこちらの記事にも書きましたが、まずは自分の生理周期をチェックしてみましょう。
生理周期の正常範囲は25日から38日 かつ周期ごとの変動が6日以内と言われています。
この正常範囲内に生理周期は収まっていますか?
生理周期の正常範囲より長すぎたり短すぎる場合は、無排卵だったり、排卵していても卵子の質があまりよくない可能性があります。
また、生理が2ヶ月に1回しかない場合などは、卵子の質に問題がある場合もありますが、何より妊娠のチャンスが年間で半分に減ってしまうことになります。
排卵にトラブルがある場合、どれだけ頑張って妊活をしていてもなかなか妊娠には至りません。
生理周期が乱れている場合は、できるだけ早い段階で不妊クリニックに相談をした方がいいでしょう。
生理痛の有無
「生理痛はあっても仕方ない」そう思っている人は実は少なくありません。
鎮痛剤を飲んで痛みを我慢しながら過ごしている人もいるでしょう。なかには妊娠を考えるまでは生理痛が酷くてピルを服用していたという人もいるかもしれません。
これらの生理痛の中には不妊の原因になる子宮内膜症が隠れている事があります。
生理期間に1回ほど鎮痛剤を服用すれば問題なく日常生活を送れるレベルの生理痛であればさほど心配する必要はありませんが、
「年々生理痛が酷くなっていっている」
「鎮痛剤の量が増えていっている」
「鎮痛剤を飲んでも痛みで動けなくなることがある」
こんな場合は要注意です。
また、酷い生理痛から解放されたくてピルを服用していた場合も注意が必要です。
酷い生理痛で悩んでいる場合は早めに不妊クリニックを受診して相談・検査をうけるようにしてみてください。
婦人科系の疾患の有無
妊活を始めるときは、今まで婦人科系の病気にかかったことがあるかどうかも大きな点です。
子宮筋腫や子宮内膜症、卵巣嚢腫などの診断を過去に受けていた場合は、それが妊活に影響しないかどうかを確認する必要があります。
なかには、「子供を欲しいと思ったら病院にいってくださいね」と言われている人もいるかもしれません。
「かなり前のことでもう覚えていない」という人もいるかもしれませんが、そういう場合は、妊活をはじめるタイミングで一度クリニックを受診してみましょう。
また、月経不順でクリニックに通い、多嚢胞性卵巣症候群などの排卵障害と診断されたことがある人もいるかもしれません。
排卵障害の場合は、自力での妊娠が難しくなることもありますので、早い段階で不妊クリニックを受診したほうがいいでしょう。
基礎体温
最後は、基礎体温のチェックです。
基礎体温に関してはこちらの記事を参考にして頂きたいのですが、チェックしてほしいのは次の5つです。
・きちんと2相(低温期、高温期)にわかれているか?
・低温期・高温期の体温差が0.3℃以上あるか?
・低温期の期間が長すぎないか?
・高温期が短すぎないか
・低温期が短すぎないか
基礎体温を測定してこの5つに当てはまる場合は、自己流の妊活を進めるのではなく、早めに不妊クリニックを受診したほうがいいでしょう。
排卵検査薬で排卵日を知ろう
上記の5つのポイントで特に問題がなければ、まずは自分たちで妊活に取り組んでみてください。
月経の時期以外で2日や3日おきに性交渉が持てるのであれば、特に排卵日を特定する必要はありませんが、平日は仕事などで忙しくてなかなか性交渉の回数を増やすのは難しいカップルも少なくありません。
そんな時は、排卵検査薬で排卵日を特定して、排卵日前の1週間程度だけでも性交渉の回数を増やしてみてみましょう。
排卵検査薬を使って排卵日だけを狙うカップルもいますが、排卵日だけを狙う性交渉はお勧めできません。
排卵日の2日前が一番妊娠しやすいというデータがありますが、そもそも排卵検査薬ではこの排卵日2日前を特定するのが難しいからです。
また、精液は定期的に射精して入れ替える必要があります。
月1回だけの性行為では精子も古くなってしまいます。
平日に性交渉の回数を増やすのは大変かもしれませんが、少し頑張ってみてください。
排卵日や排卵検査薬に関することはこちらの記事も参考にしてみてください。
男性の精子の状態もチェックしよう
不妊の原因は男女ともに半分ずつあります。
女性だけが、基礎体温を測定したり排卵日をチェックしても、男性の精子に問題があれば、それらの努力は意味をなさなくなってしまいます。
以前は、不妊クリニックや泌尿器科に行かないと男性の精子のチェックは出来ませんでしたが、今は精子をチェックできる簡易キットがインターネットやドラックストアで手に入るようになりました。
詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
男性も妊活を始める前に、簡易キットで精子の数や状態をチェックしてみましょう。
キットによってはアプリである程度の基準がわかるものや、オンライン相談が可能なものもあります。
簡易キットで精液検査項目のすべてがわかるわけではありませんが、数が極端に少ない場合や、全く動いてない場合などの異常に関しては気づくことが出来ます。
妊活は決して女性だけの問題ではありません。
ご夫婦で一緒に取り組むという意味でも、ぜひ男性にも最初に検査をしてほしいと思います。
生活習慣や食事の見直しは同時並行で行うことがポイント
「妊活を始めるならまずは体質改善から」こんな話を耳にすることがありますが、食事や生活習慣の見直しは妊活と同時並行で行うようにしましょう。
もちろん食事や生活習慣の見直しは大切ですが、これらに時間をかけたばかりに年齢があがってしまっては本末転倒です。
また、こうすれば妊娠しやすくなるという生活習慣や食習慣はありません。
必要以上にこだわることなく、3食バランスよく食べて、適度な運動としっかりと睡眠をとる事、そしてストレス解消できるものを見つけておくことが、日々の生活の中では大切になってきます。
ただ、BMIの値が20~24の範囲から外れている場合は、これらの数値に収まるように食事や運動習慣を見直してみてください。
また、体質改善と銘打って根拠の乏しい施術やサービス、商品を見かけることがありますが、それらは必要ないものがほとんどです。
あまり振り回されないようにしましょう。
それでも妊娠しない場合は、何か他に不妊の原因があるのかもしれません。
一度お二人で、不妊クリニックを受診し検査を受けてみてください。