他人と比較することのない生理周期や生理の状態、「あなたの生理周期や生理の状態は大丈夫ですか?」と質問されて自信をもって答えられる人はどれぐらいいるでしょうか?
とりあえず生理が来ているから大丈夫と思っていませんか?
生理の量や生理痛など、不安に思ったまま放っていませんか?
病院に行ったほうがいいのかどうかわからずに一人で悩んでいる人もいるでしょう。
生理周期の乱れや、生理痛、生理の量が極端に多い場合や少ない場合は、婦人科疾患や不妊の原因が隠れていることもあります。
自分の生理の状態はどうなのか?
妊娠を望んでいるのであれば一度チェックしてみてください。
もし、あれ?なんかおかしい?と思うのであれば、一度近くの婦人科や不妊クリニックで相談してみましょう。
この記事の監修医師
産婦人科専門医 / 生殖医学会生殖専門医
順天堂大学医学部産婦人科客員准教授
順天堂大学医学部卒業。順天堂大学産婦人科先任准教授(助教授)、順天堂大学医学部附属浦安病院リプロダクションセンター長を歴任。世界初となる公費助成の「卵子凍結保存プロジェクト(千葉県浦安市)」の責任者。2019年メディカルパーク横浜を開院。
目次
「生理周期」の基本知識
最初に、生理周期の基本的なことについてお話したいと思います。
生理周期とは、月経期(生理期間)、卵胞期、排卵、黄体期の4つの周期に区分されます。
卵胞期では子宮内膜が厚くなり、卵胞が成長します。この時、基礎体温では低温期にあたります。
黄体期は排卵以降の期間を言い、精子と卵子が受精していればこの期間に着床することになります。基礎体温では高温期になります。
一般的には、排卵までの期間が14日前後となり、その後高温期も約14日間続くことになります。
排卵までの期間が短かったり、長くなったり、高温期の期間が短くなることで生理周期が長くなったり、短くなったりします。
正常な生理周期とは?
月経周期の正常範囲は25日から38日、かつ周期ごとの変動が6日以内と言われています。
もしかしたら、この日数をみて以外に幅があるのだなと感じた人もいるかもしれません。
ネットや雑誌、書籍等で見かける生理周期をあらわした表は28日周期のものが多く、生理周期は28日前後と思っている方も結構います。
ただ、注意してほしいのが「周期ごとの変動が6日以内」という点です。
例えば、先々月は26日 先月は36日 今月は25日 となると変動周期が6日以上になるので、正常周期とは言えません。
ちなみに生理の持続期間は3日~7日が正常範囲になります。
生理期間が2日以内に終了したり、8日以上だらだら続いたりする場合は、一度医師の診察を受けましょう。
こんな生理は異常かも?
生理周期が25日未満になることを頻発月経と言います。要因としてはいくつかありますが、排卵していない無排卵周期や黄体機能不全の時にも生理周期が短くなることが知られています。
逆に、生理周期が39日以上になることを希発月経といいます。原因としては多嚢胞性卵巣症候群や無排卵周期が知られています。
生理周期が短い場合も、長い場合も不妊に関連する原因が含まれていることから、生理周期が正常範囲から外れている状態が続く場合は、はやめに不妊専門クリニックを受診しましょう。
現時点では妊娠をまだ考えていないという方は、3か月しても生理が来ない場合は一度婦人科を受診しましょう。
生理不順が続くようであれば、受診してピルを処方してもらうのも一つの方法です。この際に生理不順の原因を調べておけば、妊活スタート時にすぐに治療をスタートすることも可能です。
またやせすぎたり、太りすぎたり、過度のダイエットが原因で、生理が止まったり、生理周期が乱れたりすることもあります。
このような場合は、クリニックを受診しながら、体重のコントロールも必要になってきます。まずは適正体重を目標に、減量したり、体重を増やしたりするようにしましょう。
一般的な適正体重はBMI18.5~25と言われていますが、不妊症のリスクが低くなるBMIの値は20~24であり、最も理想的なBMIは21と言われています。
妊娠を望んでいるのであれば、BMI20~24を目標にするのがいいでしょう。
ただ、生理周期はストレスによっても乱れやすいもの。
結婚したばかりだと、そんな風に感じていなくても新しい生活がストレスになることもあります。そのような場合は少し様子を見てみるのも一つの方法です。
妊娠のチャンスは排卵した時のみです。
排卵していないのに、どれだけ頑張って性交渉をとっても妊娠には至りません。
上記にも書きましたが、一般的に正常な月経周期は25日~38日ですので、排卵が起きるのは1年間で12回程度です。
月経周期が長くなるということは、この排卵の回数も減るという事になり、結果妊娠のチャンスも減ることになります。
あなたの経血量は多い?少ない?
もしかしたら一番、標準的な量や他人と比較しにくいものが生理の量かもしれません。
そもそも、自分の生理の量が一般的なものと比べて多いのか、少ないのか、いまひとつわからないという人もそれなりにいるのではないでしょうか?
月経カップという生理用品を利用している人は、経血量がわかるので自分の量がどれぐらいなのかは把握されているかもしれませんが、まだまだ生理用品の主流は生理用ナプキン。
いったんナプキンに出てしまうとその量が多いのか、少ないのかはなかなかわかりません。
一般的に生理の経血量は1周期で20mLから140mLと言われていますが、かなり幅があってピンときにくいかもしれません。
もし、あなたの生理の量が、1時間で夜用ナプキンを取り換えなければならないくらいであれば、通常より経血量が多い可能性があります。
経血量が多い原因としては子宮筋腫や子宮腺筋症などがあげられます。
過多月経は貧血の原因にもなりますから、放置せずに医師の診断を受けることをお勧めします。
また、子宮筋腫は部位によっては不妊の原因になることもありますので注意が必要です。
生理痛があるのは異常?
生理痛に関しては、生理痛なんて一度も経験したことないという人から、生理期間に薬を1,2度服用すればなんとかなるレベルの人、薬なんてまったく効かずに寝込むレベルの人まで様々です。
生理痛はなくて当たり前というネット情報もみかけますが、生理痛があるからといって必ずしもどこかに異常や病気が隠れているわけではありません。
ただ、妊娠を望んでいない期間であればピルを服用するという選択肢もありますので、生理痛で悩んでいる人は一度婦人科を受診するのも一つの方法です。
また、生理痛には子宮内膜症などの病気が潜んでいる可能性もありますので、あまりに生理痛がひどい場合や年々生理痛がひどくなっている場合も、一度クリニックを受診して生理痛の原因を調べてもらいましょう。
子宮内膜症は発症する部位によって卵管障害の原因になったり、卵巣機能の低下を招いたり不妊の原因になることがあります。
実際に不妊症の女性の50%近くが子宮内膜症を発症しているとも言われています。
その為、子宮内膜症を発症している場合は、妊娠を望まない期間は低用量ピルを服用することが勧められます。
また、子宮内膜症を発症している場合は、自然妊娠やタイミング治療、人工授精での妊娠が難しい場合もあります。
生理痛がひどい場合、過去に子宮内膜症と診断された場合は、自己流の妊活を続けるより、できるだけ早めに不妊専門クリニックを受診し、不妊検査を受け、医師と今後の治療方針について話し合ったほうがいいでしょう。
生理周期や生理痛で悩んでいる場合のクリニックの受診について
妊活をしながら生理周期や生理痛で悩んでいる場合、婦人科を受診したらいいのか、それとも不妊専門クリニックを受診したらいいのか悩む場合もあるでしょう。
妊娠を望んでいるのであれば、基本は不妊専門クリニックを受診することをお勧めしています。
何か不妊につながる異常があった場合に、スムーズに不妊治療に進めるのが大きな利点です。
生理周期の乱れや酷い生理痛には不妊の原因が隠れていることもあるため、最初から不妊専門クリニックの方がいいでしょう。
婦人科やレディースクリニック等でもタイミング治療や人工授精までなら可能なクリニックもありますが、検査が十分でなかったり、体外受精へのステップアップ時に転院が必要になったりすることもありますから、妊活中であればあまりお勧めはしていません。
今すぐ妊娠を望んでいない場合は、婦人科やレディースクリニックの受診で大丈夫です。
ただし、排卵異常などが見つかった場合は、受診したクリニックで今後妊娠を望んだ時にどのように行動すればよいのかを確認しておいてください。
医師から、妊娠を希望するときは治療が必要になると言われた場合は、自己流の妊活をスタートさせるのではなく、不妊専門クリニックを受診し今までの経緯を説明しましょう。
参考資料
病気がみえる Vol.9 婦人科・乳腺外科 第3版 (株)メディックメディア
データから考える 不妊症・不育症治療 第1版 (株)メディカルビュー社