体外受精でよく使われる7種の薬と飲み忘れた場合の対処法(採卵編)

体外受精にステップアップすると、薬の多さに驚き、混乱する人も少なくありません。
この記事では、体外受精の採卵の際に使う薬について解説していきます。

この記事の監修医師

体外受精で薬を使うタイミング

体外受精は、排卵誘発(卵巣刺激)→採卵→受精→培養→移植という流れで治療が進んでいきます。
体外受精の基本的な流れに関してはこちらの記事(不妊治療って何するの?体外受精の基本的な流れ)も参考にしてみてください。

その中で、薬を使用するのは採卵の為の排卵誘発(卵巣刺激)と、ホルモン補充周期で移植した場合になります。
採卵時の薬は、排卵誘発(卵巣刺激)の方法によって使用する薬も変わってきます。

排卵誘発(卵巣刺激)の方法は大きくわけると、自然周期法、低卵巣刺激法、高卵巣刺激法の3つにわけることが出来ます。
また、この低卵巣刺激法、高卵巣刺激法の中でも様々な刺激方法があり、使用する薬剤や頻度、量も変わってきます。

低卵巣刺激法

・クロミフェン法
・クロミフェン-hMG/FSH法
・クロミフェン連続投与法

高卵巣刺激法

・GnRHアゴニスト ロング法
・GnRHアゴニスト ショート法
・GnRHアンタゴニスト法

これらの排卵誘発(卵巣刺激)方法の違いについてはこちらの記事(体外受精で行う排卵誘発(卵巣刺激)、3つの方法とは?)に詳しく書いていますので、参考にしてみてください。

採卵の時に使う薬について

採卵の時に使う薬は、大きくわけると、
①たくさんの卵子を育てるために卵巣を刺激する排卵誘発剤
②採卵前にLHサージを誘発するための薬
③採卵前に排卵してしまわないように排卵を抑制するための薬
になります。

また、クリニックによっては採卵の前周期から低用量ピルを服用して、卵子の発育にばらつきが出ないようにコントロールするクリニックもあります。

排卵誘発剤には様々な種類があり、病院の方針や個々の状態にあわせて使う薬は変わってきます

1回目の採卵時と2回目の採卵時で使う薬の種類や量が変わることもありますので、採卵を行う際は、毎回薬の使用の流れについてしっかりと確認しておく必要があります。

①排卵誘発剤

《経口薬》

・シクロフェニル
 薬剤名:セキソビット
 あまり排卵誘発効果が高くないため、体外受精で用いられることはほとんどない。

・クロミフェン
 薬剤名:クロミッド セロフェン
卵胞から放出されたエストロゲンによるネガティブフィードバックを抑制することで、FSHをより多く分泌させて排卵を促す。
AMHが高い場合は、クロミフェンだけで複数の卵胞が育つことがあるが、一般的には低刺激採卵の時や高刺激採卵時に注射剤と合わせて用いられることが多い。
子宮内膜が厚くなりにくかったり、頸管粘液が減少することがある。

・アロマターゼ阻害剤
 薬剤名:レトロゾール フェマーラ
本来は乳がんの為の治療薬。
エストロゲンの生成を阻害し、視床下部に作用して下垂体から卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を増加させて、卵胞を育てる。
多嚢胞性卵巣症候群の場合やクロミッドでは効果がない場合に用いられることが多い。
クロミフェンのように子宮内膜や頸管粘液に影響を及ぼしにくい。

《注射剤》

・ゴナドトロピン製剤(hMG製剤 FSH製剤 rFSH製剤) 
 薬剤名:HMGフェリング ゴナピュール フォリスチム ゴナールエフ 等

FSH製剤を注射することによって体内のFSH濃度を上昇させ排卵誘発を行う。
複数の卵胞を育てることが出来るため、体外受精の排卵誘発の際に用いられることが多い。
自己注射が可能なタイプもある。
量を調整することで、低刺激採卵から高刺激採卵まで幅広く使用されている。
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発症リスクが上がるため、多嚢胞性卵巣症候群の場合や、年齢的に卵胞が育ちやすい場合は注意が必要

②LHサージを誘発する薬

《注射剤》

・hCG注射
 薬剤名:ゴナトロピン、フェルチノーム
排卵を促す注射。自己注射が可能
hCG投与後、約36時間から42時間後に排卵するため、採卵時間にあわせて注射の時間が決められる。
hCG注射の時間は必ず守る必要がある
妊娠検査薬で検出するhCGと同等の物の為、hCG投与後はしばらくの間、妊娠検査薬が陽性になる(儀陽性反応)ため注意が必要である。
点鼻薬でLHサージを誘発する方法と比較して、確実性が高く、費用も安く済む。
ただし、卵巣過剰刺激症候群を起こす可能性があるので注意が必要

《点鼻薬》

・GnRHアゴニスト製剤
 薬剤名:スプレキュア イトレリン ブセレキュア
長期間使用すると排卵を抑制するが、1回の使用の場合は下垂体に働きかけ、排卵を促す。
ただし、鼻腔粘膜からの吸引は不安定なため、上手く排卵が起こらない場合もある。
卵巣過剰刺激症候群になりやすい場合などは、こちらの点鼻薬を使うことで卵巣過剰刺激症候群のリスクを下げられる。
ロング法やショート法での排卵誘発の場合は、点鼻薬でLHサージを起こすことは出来ない。

③排卵を抑制(コントロール)するための薬

《注射剤 経口薬》

・GnRHアンタゴニスト製剤
 薬剤名:セトロタイド ガニレスト レルミナ
月経3日目からゴナドトロピン製剤を注射し、卵胞がある程度発育してきたタイミングでGnRHアンタゴニストの注射若しくは服用を開始する。
脳の下垂体機能を一時的に抑える(LHの分泌を抑制)ことで排卵を抑制することが出来る。
GnRHアンタゴニスト製剤を用いるGnRHアンタゴニスト法では、GnRHアゴニスト法(ショート法 ロング法)よりも卵巣過剰刺激症候群のリスクが下がる
また、ロング法やショート法でうまくいかない場合は、GnRHアンタゴニスト製剤を用いることで質のよい卵子が採卵できる場合がある。
ただし、この薬の効果は個人差が大きく通院回数が増えるというデメリットがある。

《点鼻薬》

・GnRHアゴニスト製剤
 薬剤名:スプレキュア イトレリン ブセレキュア

脳の下垂体機能を一時的に抑える(LHの分泌を抑制)働きをする。
ロング法かショート法かによって使用開始タイミングが違う。
使用方法、使用回数、使用タイミング、使用期間はクリニックの指示に従う。

注射のし忘れ、薬の飲み忘れ、どう対処する?

忙しい日々の中で、不妊治療のための通院スケジュールをこなしていると、薬を飲み忘れたり、注射をし忘れてしまうこともあるかもしれません。

その場合は、慌てずにクリニックに確認して指示を仰ぐようにしましょう。
自己判断で注射や薬を飛ばしてしまったりしないように注意が必要です。

8時間おきなど、時間が指定されている薬に関してはスマートフォンのアラーム機能を使うなどして、時間管理することをお勧めします。

また、万が一の飲み忘れや打ち忘れの為に事前にクリニックで、薬ごとに対処方法を確認しておくのも一つの方法だと思います。
ただし、hCG注射は時間厳守ですので、この薬だけは絶対に忘れないように気を付けましょう。

スマートフォンのアラームにプラスして、注射の時間帯にいる場所でよく目につくところにメモを貼っておくのも一つの方法です。

点鼻薬が上手くいかないという話もよく耳にします。
あらかじめクリニックでどれぐらいの量を吸引する必要があるのかなど確認しておくといいでしょう。

いかがでしたでしょうか?体外受精に使う薬には色々な薬があります。
何時に注射する、何錠服用するなど細かく定められているものも少なくありません。
わからないことがあれば、どんな些細なことでも自己判断せずに必ず病院に確認するようにしましょう。

参考資料
くすりのしおり
データから考える 不妊症・不育症治療 第1版 (株)メディカルビュー社

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