【レポート】妊活ラボ#3「このまま治療を続ける?それとも、転院する?」

不妊治療をしているけどなかなか妊娠に至らない…
そんな時「今のクリニックで治療を続けるのか、それとも転院した方が良いのか」悩まれる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、延べ300人以上の妊活や不妊治療の相談にお答えしてきた不妊カウンセラー・臨床検査技師の笛吹 和代(うすい かずよ)さんをお招きして、転院のタイミングや仕事との両立などのお話をお伺いしました。(2020/12/11配信の内容

不妊治療中の転院のタイミング、どうしたらいい?

さっそくお伺いしたいのですが、不妊治療を続けているけどなかなか妊娠しない場合、転院を考えた方がいいのでしょうか?

実際、転院する・しないというご相談はとても多いです。

まずは、転院せずに今のクリニックで治療を続けた方がいい場合について先にお話します。

・不妊治療や検査の選択肢が十分である
・医師が不妊治療の提案をしっかりしてくれる

このような場合には、慌ててクリニックを転院する必要はないと思っています。

クリニック選びや不妊治療を進める上では、「治療の選択肢が多いこと」が1番のポイントと考えているからです。

たとえば、排卵誘発の刺激(自然周期排卵、低刺激排卵、高刺激排卵)についてもどれか1つだけではなくて、患者さんに合わせた刺激をしてくれるようなクリニックであれば、転院する必要はないのではと思います。

次に、転院を考えた方が良い場合についてお話します。

・男性不妊、卵管造影などの検査が不十分
・不妊治療のステップアップに積極ではない(先生を説得してステップアップを目指すよりは、新しいクリニックに転院した方が進みが早い)
・治療や検査の選択肢が少ない
・一つの刺激方法にこだわったり、何度も同じ治療を繰り返している
・クリニック内で情報共有がされていない


このような状況である場合や、すでに今のクリニックでやり切ってしまった感がある時には、転院のタイミングであると考えます。

あとは最近何件かご相談を受けたのですが、体質改善や食事療法に重きを置いていて、本来の不妊治療を行なってくれないクリニックの場合です。

体質や食事を見直すのはもちろん大事なことですが、あくまでも不妊治療と並行してやっていくものなので、本来進めるべき不妊治療が遅れてしまう場合にも転院を考えた方がいいのではと思います。

転院のメリット・デメリットはあるの?

転院のメリット・デメリットを教えていただけますか?

転院のメリットは、5つあります。

1. 不妊治療の選択肢が増える
2. 男性不妊への対応
3. 検査の選択肢が増える(特に着床関連については、対応している、していないクリニックがはっきりと分かれる)
4. 医師によって持ち合わせている知識や技術が違う(表には見えないけど、薬や排卵誘発剤など、こまかな調整で結果が変わることがある)
5. 培養技術の違い

転院先のクリニックでは、今までの治療と違う切り口があるという場合には、転院のメリットというのは大きいと考えています。

一方、デメリットも5つあります。

1. 一部検査が重複し、費用が余分にかかることがある(前のクリニックでの結果は採用されず、やり直しとなる可能性もある)
2. 人気のあるクリニックに転院する場合、初診予約待ちで時間がかかることがある
3. クリニックの方針によっては、もう1回タイミング法や人工授精をやってみましょう等、すぐにステップアップできず、時間を取られてしまうケースもある
4. 地方の場合、通院に時間やお金がかかることがある
5. 医師や看護師との相性は通ってみないとわからない(口コミは1番主観が入るため、あくまで参考程度に)

転院を考えるのであれば、デメリットを上回るものが必要になってくると思います。

今通っているクリニックの先生と相性が合わないという方もいらっしゃると思います。この場合も転院を考えた方がいいのでしょうか?

相性がいいかどうかは患者さんの主観が1番入ってくるところなので、実際通ってみなければわからないというのが正直なところです。

実は愛想は悪いけど、知識も技術も持ち合わせているという先生もいらっしゃいます。

不妊治療は、生殖医療技術という言葉があるくらいなので、相性も大切ですが、クリニックの実績や技術力もある程度重視して選んでいった方がいいと思っています。

ただ、体外受精を3回、6回とやり切ったけど、まだ治療を続けたいという方もいらっしゃいます。この場合は治療(体外受精を続けるか、人工授精やタイミングにステップダウンするか等)が長くなる可能性もありますので、メンタル面を考えると、先生やクリニックとの相性を優先するというのも1つの選択肢かなと思います。

クリニック選びには技術面が大切とのことですが、一個人として、先生の技術を見極めることは可能なのでしょうか?

そうですね。技術があるかどうかを見極めるのはなかなか難しいと思います。

ですので、
・治療や検査の選択肢を医師がしっかり提案してくれるかどうか?
・ずっと同じ治療を続けていないか?

という部分は、判断材料になるのではと思います。

やっぱり患者さん側は不妊治療を続ければ続けるほど、どんどん知識が増えていきます。

その時に「こういう検査があるんですが、先生どうですか?」と聞いたときにしっかり説明できる医師かどうかは、1つ見極めるポイントになるのではないでしょうか。

不妊治療と仕事を両立させるために、気をつけた方が良いポイントは?

クリニックを転院しても仕事を続けたい場合、治療との両立に関して何か気をつけた方がいいポイントはありますか?

特に通院時間が今までより長くなる場合は、「仕事をしながら通院ができるのか」ということは転院前にしっかり考えておく必要があります。

私自身は不妊治療の通院に2時間以上かかり、仕事の両立が難しくて退職したうちの1人です。

通院回数は、クリニックや個人によって全然違います。
やってみないとわからない所がありますので、すぐに仕事を辞めるのではなく、まずは会社の制度(時間単位で休暇をとれるのか、不妊休暇があるのか、在宅ワークに切り替えられるのか等)を確認されることをおすすめします。

意外に会社の制度や規則を見たことがないという方が多いので、まず最初に何か使える制度があるかどうかを調べてみてください。

あとは、まだ認知が広まっていないのですが、厚生労働省から「不妊治療連絡カード(*)」というものが出されています。このカードを会社に出す方法もあります。

また、実際に相談者の方で、今までと同じ働き方ができなくなった方が人事の方に相談したところ、新たに休暇や在宅勤務制度などを作ってもらったというお話も聞きました。
ですので、転院して通院時間が長くなるからといって、仕事をすぐに辞めるのではなく、仕事をしながら通院ができる道を模索してみてください。

現在不妊治療の保険適用の話が出ていますが、それでも治療には数十万単位でお金がかかります。

私自身の経験からも、「仕事を辞めて本当に後悔しないか?」を今一度慎重に考えていただき、治療と仕事の両立ができる方法を考えていただけたらなと思っています。

*不妊治療連絡カードとは?
不妊治療を受けている従業員等が、企業側に、不妊治療中である事を伝える際や、企業独自の制度等を利用する際に使用する等、仕事と不妊治療の両立を行う従業員の方をつなぐツール

https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/30.html (厚生労働省HPより)

転院を考える時に気になる受精卵の移送

では、今のクリニックで受精卵がある場合、転院先ではどのようにしたらいいでしょうか?

受精卵のグレードにもよるかと思います。
もし受精卵を戻して妊娠する可能性があるのであれば、戻してから転院した方が良いです。

たとえば年齢が38、39歳の方からご相談を受けた場合は、今のクリニックで受精卵を戻すとなると時間もかかりますので、いったん受精卵は残しておいて別の病院で採卵からやりましょうとお話することもあります。

また転院先でたくさん卵が取れた場合は、前のクリニックで保存しておいた受精卵を使わないというケースも出てきます。

受精卵については、保存期間の延長をする・しないの通知が来ますので、その時に判断されていただくのが良いと思います。

最後に、転院の際にはクリニックからの紹介状は必要ですか?

不妊治療に関しては、紹介状はなくても大丈夫なケースが多いです。

ただ、紹介状がない場合、新しい転院先で一から検査を実施する場合もあります。

あとは紹介状がなくても検査結果の用紙があれば、転院先の方でも参考にされるケースもあします。転院の可能性がある場合は、検査結果の用紙は捨てずに手元に残しておくことをおすすめします。

笛吹さん、今回は貴重なお話を伺えて大変勉強になりました。どうもありがとうございました!

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