妊活ラボ第8回目となる今回は、ゲストに桜の芽クリニック 田中院長をお招きして、30代後半・40代の妊活について、リスクや注意点などをお伺いしました。(2021/3/22 配信の内容)
目次
30代後半・40代の妊活について
さっそくですが、30代後半から40代の妊活は何か違いはありますか?
そうですね。やはり30代後半から40代は、年齢と共に3つの大きな変化があります。
1つ目は、不妊につながる子宮卵巣の病気疾患率の増加です。
子宮筋腫、チョコレート嚢腫、クラミジア卵管炎、子宮内膜症など、30代後半から年齢と共に疾患が増えてきます。
子宮卵巣の病気になると妊娠率、着床率など不妊につながりますので、30代後半、40代の方は、妊活の前にまずは病気がないかどうか検査をする必要が出てきます。
2つ目は、子宮卵巣以外の病気疾患率の上昇です。
甲状腺機能の低下については、40代から増加する傾向にあります。
妊娠中のマイナートラブルや流産率にもつながると言われています。
あとは、高血圧など基礎疾患を持つ方も増えてきます。妊娠中のリスクが高くなることが知られています。
乳がんについては30代後半から徐々に増えて、40代後半でピークを迎えます。
日本では11人に1人が乳がんになると言われています。
乳がんになると治療などで一定期間、妊活を休まなければならないこともあります。
3つ目は、受精卵の質に関連する妊娠率の低下・流産率の上昇です。
体外受精を行なった場合の妊娠率・流産率のデータ(日本産婦人科学会)を見ると、妊娠率は35歳くらいから明らかに低下し、40歳を過ぎると急速に低下しています。
逆に流産率は、年齢と共に上がっています。
このようなリスクが増えてくるのが、30代後半から40代の妊活の難しさだと思っています。
年齢と共に子宮や卵巣だけじゃなくて、全身の疾患についても気をつけていかなければならないんですね。
そうですね。20代の妊活とは大きな違いになるかと思います。
あとは、40代の妊活の問題点についてですが、たとえば30代前半の方だと「まずタイミング法でやってみて、もしダメだったらステップアップしよう」というように、考える時間を持つことができます。
それが40代になると、見極める時間がなくなり、いきなり体外受精からスタートしなければならないケースもあります。
特に男性側に体外受精治療に抵抗がある方も多いので、2人で情報共有しながら進められると良いのではと考えています。
クリニックを受診するタイミングはいつがベスト?
では、30代後半、40代の方がクリニックを受診するタイミングはいつ頃がベストでしょうか?
そうですね。先ほどお話した子宮筋腫などがあると、妊活がスムーズに進まないケースも出てきますので、やはり35歳以上の方は妊活スタートと同時にクリニックを受診して、検査されることをおすすめします。
検査して問題なければ、3〜4ヶ月タイミングを取っていただく。それでも妊娠に至らない場合はまた受診してくださいとお伝えしています。
タイミング、人工授精、体外受精の目安は?
次に、タイミングや人工授精にかける期間の目安はありますか?
またどれぐらいで体外受精にステップアップするべきでしょうか?
あくまでも参考値になりますが、当院を受診された40〜45歳(初診当時)の女性患者様136人のデータを元に以下のとおりお話したいと思います。
[タイミングや人工授精の目安について]
40〜42歳の方で、出産された32人のうち16人(50%)はタイミング・人工授精での妊娠でした。
なので、いきなり体外受精ではなく、タイミングや人工授精の期間を設けてみても良いのではと感じました。
43歳以上について、出産に至ったのは、体外受精で妊娠された方のみという結果でした。結果からも、タイミングや人工授精を試す余地はないような印象です。
[体外受精へのステップアップについて]
40〜42歳で、不妊期間が1年以内の方がタイミング・人工授精で妊娠するまでの期間は約6ヶ月でした。
同じく40〜42歳、不妊期間が2年以上の方の場合は、体外受精からスタートして、妊娠するまでの期間は同じ6ヶ月という結果でした。
以上のデータから、体外受精の方が、タイミング・人工授精よりも短い期間で妊娠となる可能性があることがわかりました。
まとめると、40〜42歳で不妊期間が1年以内の方は、5ヶ月くらいタイミング・人工授精を試してみて、その後、体外受精へステップアップされても良いのではと考えています。
ありがとうございます!非常に興味深いデータで大変参考になりました。
不妊治療の期間や費用について
では不妊治療の期間や費用については、桜の芽クリニックの場合はいかがでしょうか?
初めてクリニックに来られた方(妊娠希望、検査のみの場合)で、一般不妊検査の費用は大体5万円くらいです。
あとは、慢性子宮内膜炎の検査が1万3千円、Th1/Th2が2万円となります。
体外受精に関しては、採卵までの薬剤と検査費用で約5万円。
排卵誘発剤を使用して複数採卵した場合は23万3千円。
その他、新鮮肺移植は7万円、移植せず全胚凍結となった場合などは別途費用がかかってきます。
1番多いパターンとしては、採卵して1個を新鮮胚移植、残り2個を全胚凍結です。
大体トータルで45万円くらいになるかと思います。
では、40代で排卵から妊娠までたどり着く人の割合は、どのくらいでしょうか ?
当院の妊娠した方を対象としたデータになります。
40〜42歳の患者様で、体外受精をして妊娠・卒院された方は66人のうち14人という割合でした。
あとは、卒院までの平均採卵回数(いい卵が取れるまで)は、35〜39歳で平均1.8回、40〜42歳で2.3回、43〜45歳で4.6回と年齢層によって差があることがわかりました。
30代後半・40代の妊活のリスク、高齢出産に向けてできること
わかりやすいデータをありがとうございます。ちなみに30代、40代になった時の妊活中のリスクは何かありますか?
そうですね。年齢問わず、一般的には排卵誘発剤投与による卵巣過剰刺激症候群の発症というリスクがあります。
あとは、タイミング法や人工授精では、排卵誘発剤を使って複数排卵させれば妊娠率は上がります。
ただ、双子となるリスクも高まりますので、その辺りは慎重に考えなければなりません。
また不妊治療では、ご夫婦の考え方が違い、悩まれる方もいらっしゃいます。そんな時は通っているクリニックをうまく利用して相談していただけたらと思います。
30代、40代の妊活で、治療を含めて何か気をつける事はありますか?
最初の方でもお話しましたが、やはり30代後半、40代になると乳がん、子宮がんのリスクが高まります。
定期的に受けた上で、何か気になるところがあればすぐに受診してください。
あとは、適度な運動は、冷え対策や成人病発症予防にもつながるのでおすすめです。
夜の睡眠も0:00〜2:00の間は卵が育ったり、いろんな機能が修復されますのでしっかり睡眠を取ることが大事です。
また、採卵前のお酒はNGではありませんが、深酒をしてしまうと眠りが浅くなりますので注意してください。
高齢出産に向けて、妊活中からできることは何かありますか?
そうですね。やはり妊娠、出産、育児と続きますので、体力は大事です。ちょっとしたことでもいいので、体を動かすことを意識していただけたらと思います。
妊娠中の高血圧などのリスクを上昇させないためにも、体重管理も気をつけていきたいところです。
あとは、私の主観なんですが、妊娠される40代の方を見ていると気持ちが若い方が多い印象です。
不妊治療中は、どうしても年齢を意識せざるを得ないことが多いですが、気持ちを若く!というのは非常に大事なことだなと感じています。
治療のやめ時について
最後のご質問になりますが、治療のやめ時について、先生としてはどのようにお考えでしょうか?
受診されたときの年齢にもよりますが、46歳以上で妊娠されて出産された方は、私には今まで治療経験がないんですね。なので、46歳というところは一つの目安になるのかなと考えています。
あとは他のクリニックの治療期間と合わせて、3年経っても妊娠しないという場合は、なかなか難しいものがあるなと感じています。
ただ、そのなかでも治療を続けたいという方もいらっしゃるので、患者様に寄り添いながら進めているところです。
田中院長、貴重なデータやお話をどうもありがとうございました!