今回のテーマは、妊活ラボの視聴者の方からのリクエストも多かった「男性不妊」についてお届けします。
不妊カウンセラーであり臨床検査技師でもある笛吹(うすい)さんをお招きして、男性不妊に関する基礎知識・夫婦で知っておいてほしい妊活に関する知識についてお話を伺いました。(2021/1/22配信の内容)
目次
男性不妊とは?
まず、男性不妊の概要について教えていただけますか?
男性不妊については、最近だいぶ認知されてきたように思いますが、要は「不妊の原因は女性だけじゃないよ」ということですね。
WHOによる不妊原因の割合では、男性側の原因が24%、男女ともに原因があるのが24%となっています。
この結果からも不妊の原因は、女性だけではなく、男性にも問題があることがわかっています。
男性不妊の原因は?
では、男性不妊の原因は具体的にどのようなものがありますか?
男性不妊の原因ですが、大きく分けて3つあります。
1つ目は、造精機能障害(精巣で精子がうまく作れない障害)
2つ目は、精路通過障害(射精がうまくいかない障害)
3つ目は、性機能障害(ED、膣のなかで射精できない等の障害)
このなかで1番多いのが「造精機能障害」です。
男性不妊の原因の約80%を占めています。
さらに造精機能障害のなかでも精索静脈瘤が約37%、原因不明が約51%と言われています。
精索静脈瘤は、精巣やその上の精策部に静脈瘤(コブのようなもの)ができること。
コブができると精子を作る能力が落ちたり、精子の老化の原因となります。
精索静脈瘤ができると2人目不妊の原因にもなりやすいと言われています。
男性不妊についてチェックするタイミングはいつ?
男性不妊についてチェックするタイミングはいつがベストですか?
男性不妊についてチェックするタイミングは、2つあります。
1つ目は、妊活をはじめたタイミング、2つ目は、パートナーがクリニックに行ったタイミングです。
結構男性って、性行為や射精ができて、精液もちゃんと出ているから大丈夫と思われている方が多いのですが、妊娠に十分な精子がいるとは限りません。
わたしが20年前検査技師として精液を検査していたとき、普通の精液に見えても顕微鏡で見ると「精子が1匹もいない」「数匹程度」というケースも見てきました。
今は市販のキットで精液の状態を簡単に調べることができますので、精液が出てるから大丈夫と思わず、妊活をはじめたタイミングで調べてみてください。
男性不妊の検査方法は?
今は、市販のキットで簡単に精液の状態を調べることができるんですね!もう少し詳しく教えてください。
男性不妊の検査方法は、おおまかに4つあります。
1つ目は、先ほどもお話した市販のキット(簡易検査、精子検査キット等)を使った検査方法です。
ドラッグストアやインターネットでも購入できます。簡単に手に入りやすく、気軽に自宅で検査できるのが特徴です。
検査項目は、精子濃度、運動率などです。
2つ目は、スクリーニング検査です。
市販のキットは検査項目が限られているので、もし妊活をはじめて半年〜1年経っても妊娠しない場合は、スクリーニング検査を受ける必要がでてきます。
不妊を扱っているクリニックや泌尿器科などで検査することができます。一般的な産婦人科ではスクリーニング検査を行っていないこともあるので、受診する前に必ず確認するようにしてください。
検査項目は、WHOに指定されている、精液の数や量、精子濃度、精子運動率などです。
3つ目は、追加検査です。
スクリーニング検査で問題があったときに男性不妊専門医がいるクリニックを受診することになります。
ただ、追加検査はどこでもやっているわけではないので、クリニックを探す必要があります。
検査項目は、ホルモン検査、エコーによる診察、遺伝子検査など。
男性不妊の約37%を占める精索静脈瘤についても、追加検査によってわかります。
4つ目は、最近話題になってきている、精子の質に関する検査です。
クリニックによって呼び方が違いますが、精子精密検査、精子機能検査などと言われています。
スクリーニング検査では、主に精子の数を見ていましたが、「精子の質」も見た方がいいんじゃないかということで、最近増えてきている検査です。
検査のタイミングとしては、スクリーニング検査で問題があったとき、原因不明不妊のとき、体外受精を繰り返しても妊娠しないときなどです。金額も1〜2万円ほどなので、希望して受けられるのも一つの手かなと思います。
ただ、問題なのは、精子の質に関する検査が可能なクリニック数が少ないことです。
今後は、婦人科ラボでも検査可能なクリニックを検索できるようにしていけたらと西さんとも話しています。
男性不妊検査の注意点と自宅でできる男性不妊の改善点
男性不妊検査の注意点はありますか?
はい。注意点としては、精子の状態は常に変化しているので、1回の検査では判断しにくいことです。
1度検査して問題なくても、その後悪くなることもありますし、1人目から2人目の間に精子の質が悪くなることもよくあります。
あとは、精子の状態が悪い=顕微授精と捉えるクリニックも多いのですが、まずは追加検査をしてなぜ精子の状態が悪いのか?原因を突き止めることが大事だと思っています。
男性不妊の治療方法
もし男性不妊の治療が必要になった場合、どんな治療方法がありますか?
男性不妊の治療方法は、2つあります。
1つ目は、精液所見に問題ありとなった場合です。
男性不妊専門医を受診していただき、詳しい検査を行います。
異常が見つかった場合は、必要な手術や薬の治療を行います。改善されたあとに妊活を再スタートする流れになります。
2つ目は、精子が全くいない無精子症の場合です。
精巣内から直接精子を回収する手術(TESE)を行わなければならない場合があります。
なので、もし無精子症と診断されて男性不妊専門医を受診するように言われた際は、あらかじめTESEが可能なクリニックを選ぶことをおすすめします。
男性不妊の治療や手術の前に何か改善策はありますか?
もし男性不妊の検査をして、原因不明と診断された場合。この場合は、生活習慣を見直すことで「精子の質」を改善できる可能性があります。
なぜかというと、精子は1日3000万個作られていて、90日かけて精子が入れ替わる仕組みになっているからです。
いい精子ができるような生活習慣を見直すことが大事です。
規則正しい生活、バランスのとれた食事、禁煙、適度な運動等。
あとは自転車・バイクに乗りすぎない、長風呂・長サウナは控える、膝上でPCを使用しないこと。
最近は男性不妊をターゲットにした、締め付けない下着も出てきていますね。
また、禁欲しすぎもNGです。禁欲してる間に精子の質が下がるからです。
男性不妊改善のサプリメントや漢方の効果について聞かれることもあるのですが、まずは基本的な生活習慣を見直してくださいとお答えしています。
精子は90日で入れ替わるんですね!
女性の「卵子の質」を改善するのはむずかしいですが、男性の方が「精子の質」を改善するチャンスがあるということですね。
そうですね。1人目と2人目の間に20kg太った旦那さんが「精子の質」が悪化したケースがありました。
ということは、食べ物を変えたり、生活習慣を改善できれば、精子の質を向上させることが可能と言えると思います。
男性側に主体的に妊活に取り組んでもらうためにはどうしたらいい?
旦那さんが妊活にあまり積極ではないというお話をよく聞きます。男性にも主体的に妊活に取り組んでもらうためにはどうしたらいいでしょうか?
そうですね。わたしもそのような話はよく聞くので、本当に悩ましいです。
子どもが欲しいのは2人で決めたことなので、女性が主体・男性がおまけではなく、夫婦2人でよく話し合ったうえで妊活に取り組んでいただきたいなと思います。
あとは男性側が正しい妊娠・不妊の知識を持つこと。
不妊の原因は、女性だけではなく、男性にあるということをまずは認識してもらうことが大事です。
卵子だけではなくて、精子の質も老化します。他人事に捉えず男性も主体的に妊活に取り組んでいただけたらなと思います。
ありがとうございます。今まで「男性不妊」がトピックになることがなかなかなかったと思うので、今回は男性不妊について深く考える良い機会でした。
笛吹さん、ありがとうございました!