【レポート】 妊活LABO#7 不育症についての基礎知識〜原因と治療法〜

妊活ラボ第7回目となる今回は、ゲストに峯レディースクリニック 峯院長をお招きして、不育症についての基礎知識、原因と治療法をお伺いしました。また、峯レディースクリニックでの実際の不育症の検査や治療法についてもお話いただきました。(2021/2/27 配信の内容)

不育症とは?

まず始めに、不育症の概要について教えていただけますか?

まず「不妊症」と「不育症」というのは、言葉は似ていますが、全く違う症状になります。

不妊症は、妊娠まで時間がかかる、妊娠しづらい場合です。

それに対して不育症は、連続していなくても2回以上の流産や死産を繰り返してしまう、もしくは生後1週間以内に原因がはっきりせず赤ちゃんが亡くなってしまうような場合です。
このように2回以上流産などを経験された方には、不育症の検査をされることをおすすめしています。

あと、最近は市販の妊娠検査薬を使ってかなり早い段階で妊娠しているか検査される方が多いのですが、赤ちゃんの袋が見えない状態で妊娠反応があったけどその後生理が来てしまうというような生化学的妊娠(化学流産)については、現時点では不育症のカウントには含まれません。
また子宮外妊娠、絨毛性疾患についても同様です。

ありがとうございます。
2回以上流産などを繰り返してしまう場合は不育症ということですが、原因はわかっているものなのでしょうか?

はい。
不育症の原因についてですが、ここでは流産の原因についてお話していきたいと思います。

流産については、実は全妊娠の1〜2割は、妊娠しても流産になる可能性を秘めています。

また、流産の原因の8割前後は、赤ちゃんの染色体の異常です。
もともと異常を持っている染色体が受精卵になると、妊娠しないということが知られています。
あとは厚生労働省の研究で、流産のリスクを高める因子をお持ちの方がいるということが、明らかになっています。

不育症のリスク因子としては、以下の症状がある場合と言われています。

・子宮の形の異常
・甲状腺
・糖尿病
・夫婦の染色体構造異常
・抗リン脂質抗体
・血液凝固異常
・リウマチ
・バセドウ病

ただ、流産はいろんな原因でおきます。
これらのリスク因子を持っていても妊娠出産される方も多くいらっしゃいます。
リスク因子を持っているから絶対ダメという風に思わなくて大丈夫です。

不育症に影響する生活習慣は?

次にお聞きしたいのですが、不育症に影響する生活習慣はありますか?

流産を経験されると、「自分の生活習慣が悪かったんじゃないか」と考える方もいらっしゃるのですが、私はそのように考える必要はないと思っています。

ただ、肥満体型の方は、出産に至るまでの割合が少ないと言われていますので、適正体重を心がけていただくことは大事です。
あとはタバコ積極的なカフェインアルコール摂取については、明確な関与はありませんが、ご自身のお身体のこと、流産のリスクを減らすためにはやめられた方が良いと考えています。

不育症検査は、どんなことをするの?

ありがとうございます。

不育症の場合、クリニックの初診ではどんな検査を行うのでしょうか?

当院の場合は、1番最初に看護師の方から問診をさせていただきます。
お辛いことを思い出させてしまうようで申し訳ないんですが、今までの歴史が非常に大事なので、たとえば何週で流産になってしまったのか、染色体の検査はされたのか等をお聞きします。
その上で、私ともお話をして、当日にできる採血検査等を行っていきます。

不育症の検査方法について、具体的に教えていただけますか?

不育症の検査方法ですが、まず超音波などで子宮の形を見ます。
そこで異常が見つかったら、さらに子宮鏡を使って、子宮の中側に仕切りがあるのかどうか検査していきます。
またMRI、子宮のなかに造影剤を入れてレントゲンを撮って子宮の形を見る方法もあります。

あとは、甲状腺の病気、抗リン脂質抗体、血液の固まり具合、染色体については、すべて血液検査で調べていきます。検査には保険適応されるものもありますが、自費診療となる項目もあります。

不育症の治療法は?

不育症の検査をして、原因がわかった場合の治療方法を教えていただけますか?

当院のケースになりますが、治療方法は主に3つになります。

まず1つ目は、甲状腺や糖尿病などの内科にかかる病気が見つかった方。このような場合は、専門の内科の先生にご紹介させていただいています。

2つ目は、子宮の形の異常が見つかった方。手術ができる近隣の大学病院などに手術を依頼しています。

3つ目は、抗リン脂質抗体を持っている方、血液が固まる傾向にある方
このような方には、血液をサラサラにする薬を飲むと妊娠の継続率が上がることが知られていますので、出産近くまで薬を飲んでもらうことがあります。

状態によっては、血液をサラサラにする薬を併用しながら、自己注射を行っていただく場合もあります。

検査をしても原因不明の場合はどうする?

不育症の検査をしても、40%は原因不明と言われていますが、この場合はどうしたらいいでしょうか?

そうですね。原因がないと言われると1番モヤモヤしてしまうと思います。

このような時にどう考えるかですが、5回目くらいまで流産の経験がある方に関してその後妊娠できるかどうかを調べたデータがあります。
このなかには原因不明の方も含まれますが、最終的には60%前後の方は赤ちゃんを抱っこできたという結果が出ています。

なので、原因はなくてもチャンスは巡ってくる、次はいい結果を得られると切り替えて、前向きにチャレンジいただくことも大事かなと思っています。

今のクリニックが不育症の検査に対応していない場合

では、不育症の検査を受けたいけど、今のクリニックではやってない場合は、どのようにクリニックを探したらよいでしょうか?

そうですね。
「不育症」の検索で出てきた病院に相談したり、あとは東京都のお話になりますが、保健福祉局のホームページを見ていただくと不育症に対する助成金の案内や検査について対応してる施設一覧を見ることができます。

また、厚生労働省の不育症研究班がやっているフイクラボのHPでも不育症に関して、積極的に研究を行なっている大学病院などが出てきますので、参考にしていただければと思います。

「テンダーラビングケア」とは?

峯院長のクリニックでは、テンダーラビングケアというのを行なっていると伺いました。どのようなケアになりますか?

テンダーラビングケアは、不育症の方の治療方法の1つです。
薬を処方する訳ではなく、ごくごく単純に、妊娠前〜妊娠後にお話を聞くなどして、精神的なケアを行う方法です。

国内、国外でも、テンダーラビングケアを行うと妊娠の継続が上がるというデータも出ています。

通常妊娠初期は、2〜3週間程度空けて診察しますが、その間、不育症の方は赤ちゃんが育っているかとても不安に感じます。なので、当院ではテンダーラビングケアとして、妊娠10週前後までは、毎週超音波検査を行なったり、お話を聞いて、患者様の不安を和らげるようなことを行なっています。

そうなんですね。
ちょっとした不安でもやっぱり担当医の先生とお話できると安心しますし、ストレス軽減にもなりますよね。

本当にそうなんです。
1人で不安を抱えず、ぜひ私やスタッフに話してもらって、みんなで頑張っていこう、1人じゃないよという風に思っていただきたいです。

不育症の検査を受けるべき場合とは?

最後のご質問ですが、体外受精で着床するけど胎嚢確認までいけないような場合は、不育症の検査を受けた方がいいでしょうか?

非常に難しい問題だと思いますが、私個人の考えとしては、この段階では不育症の検査は必要ないんじゃないかと考えています。

数年前までは、とにかく受精卵を戻すしかないというのが一般的でしたが、今はERA検査着床の窓のずれ(着床のタイミング)を見る検査子宮内膜炎がないかどうか子宮の中の環境を見る検査もあります。

体外受精で着床するけど胎嚢確認までいけないという場合には、そのような検査を受けていただくのが良いと思います。

妊娠出産は、患者さんの思いと裏腹な結果になることもあるので、本当に多くの方が妊娠できたらと願っています。

峯院長、今回は不育症について色々と教えていただき、ありがとうございました!

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