今回は、ゲストに亀田IVFクリニック幕張 川井院長をお招きして、クリニックを受診するタイミングについて伺いました。自己流妊活からクリニックの受診のタイミング、初診時の注意点などをくわしくお話いただきました。(2021/2/12 配信の内容)
目次
妊活に必要な栄養
さっそくですが、まずはサプリメントについて。
自己流妊活をする時にサプリメントを併用することについて先生はどのようなお考えでしょうか?
まず最初に自己流妊活を行う際に、サプリメントの併用が必要なのかどうかという所からお話したいと思います。産婦人科診療ガイドラインには、妊娠前から飲んだ方がいいと書かれてあるのは、基本的に葉酸のみです。なので、自己流妊活とサプリメントはイコールではないかなと思っています。
ただ、ビタミンDに関しては妊娠までの期間に関係があると言われています。
当院では、受診の早い段階で採血して、ビタミンDが足りているかどうか測定します。ビタミンDが不足している方にはサプリメントを飲んでいただいています。
あとは妊娠しない原因は人それぞれ異なります。各年齢層によって、3ヶ月あるいは6ヶ月タイミングを取った場合の妊娠率を示すデータもありますので、このような情報を参考にしながら、「自分たちはいつまで自己流妊活を試していけばいいのか」ということも検討していただければと思います。
妊娠に「ビタミンD」は必要?
先ほどビタミンDが大事とのことですが、実際ビタミンDが足りていない人は多いですか?
そうですね。当院では、初診で来られる7〜8割の患者様に対して、採血をしてビタミンDの測定をしています。
ビタミンDは基本的に30を超えると良いと言われていますが、実際に測定すると、30を超える方は6%しかいません。
ただ、数値が30前後だとあまり差がないという論文もありますので、当院では20以下の患者様に関してはビタミンDのサプリメントを飲むことをおすすめしています。
基礎体温はつけるべき?
では、次に基礎体温についてはつけた方がいいでしょうか?
はい。基礎体温は、つけた方がいいと考えています。
ただ、基礎体温をつける事で妊娠率が上がるかどうかは別問題になります。
基礎体温をつけると、ちゃんと排卵がおこっているか、検査の時期がちゃんと正しい時期に組めるか、あとは実際どれくらいのバラつきがあるかどうかの判断材料になります。
もう1点、最近は排卵日予測のアプリを使われる方も多いと思います。
アプリの排卵日予測は、今までの月経周期の平均に対して予測する形なので、排卵日キットや頸管粘液変化などに比べて正確性がないと言われています。
特に、月経の周期が不安定な方はあまり参考にならないのではと考えています。
ちなみに基礎体温は、いつまでつけたらいいのでしょうか?
体外受精の段階になると採血でホルモンを見ていきますので、基礎体温は体外受精にいくまでつけていただければと思います。
クリニックを受診するタイミングは?
次に、自己流妊活をしてもなかなか妊娠しない場合はどのタイミングでクリニックを受診すればいいのでしょうか?
基本的には、以下が受診の目安になります。
・女性年齢が35歳未満→自分たちでタイミングを取っても12ヶ月以上妊娠しない場合。
・女性年齢が35〜40歳→6か月以上妊娠しない場合。
当院では不安材料があれば、なるべく早いタイミングでまずは受診して相談してみてくださいとお伝えしています。
男性の年齢は考慮しなくても良いのでしょうか?
今のところ、日本の生殖医療のガイドラインには、男性の年齢に関する記載はありません。
ただ最近アメリカ生殖医学会泌尿器学会から、男性年齢が40歳以上だと胎児への影響、流産の確率が上がるという報告がありました。その辺りは、理解されていた方が良いかと思います。
早めにクリニックを受診した方が良い場合はある?
では、早めにクリニックを受診した方がいいのはどんな時でしょうか?
そうですね。早めに受診をした方がいいのは、以下のケースになります。
(女性側)
・女性年齢が40歳以上
・月経不順(24日以下または39日以上)
・盲腸などで炎症したことがある等
・クラミジアの感染
・子宮筋腫、子宮内膜症の既往
・卵巣の手術、抗がん剤や放射線治療の既往
(男性側)
・精巣手術の既往
・おたふく風邪など
・性機能障害
これらの項目に当てはまる方は、できるだけ早めに受診される方がいいと言われています。
一般婦人科と不妊クリニック、どちらを受診すべき?
ではクリニックを受診する際に、一般婦人科と不妊クリニック、どちらを受診したらですか?
そうですね。たとえばですが、月経困難症があって不妊かどうか不安といった場合には、まずは一般婦人科を受診いただく方が比較的親しみやすいんじゃないかなと思います。
過去に一般婦人科を受診されたことがあって、すでに診断がついている場合は、次の受診は不妊クリニックでも良いかと思います。
かかりつけの病院があれば、まずはそちらを受診してくださいということですね。一般婦人科と不妊クリニックですが、どのような違いがありますか?
はい。一般婦人科と不妊クリニックの大きな違いは、日本産科婦人科学会のART施設として登録しているかどうかです。
大前提として、体外受精などの不妊治療を行う施設・クリニックは、様々な施設基準を満たした上で、日本産科婦人科学会に登録する必要があります。施設登録がされていないと、患者様の助成金申請が認められません。
「不妊クリニック」とうたっているところは、体外受精や治療まで行なっている施設がほとんどです。
不妊クリニックの選び方
では不妊クリニックの選び方、見分け方について先生のお考えはいかがでしょうか?
様々なバイアスが入るので、一概には言えないのですが、私個人としては、やはり通いやすくて、信頼できる所が望ましいのではと考えています。
通いやすさは距離なのでわかりやすいですが、「信頼」という部分が1番判断が難しいと思います。
私が意識しているのは、実際どのくらいの患者様が来ていて、どの程度の妊娠率があるか、「データを開示する」ということです。
あとは価格が明確であるところ、HPの定期的な更新などもクリニック選びの参考になるかと思います。
ブログや口コミ、患者様の声、混み具合については、いくらでも操作ができるので、参考程度に留めておく方が良いのかなと個人的には思っています。
初診では何の検査をするの?
次に、クリニックの初診ではどのような検査が行われるのでしょうか?
当院の初診では、一般的な婦人科疾患、あとは患者様が何を望んでここにいらっしゃっているのかを丁寧にヒアリングさせていただきます。
その上での治療方針を決めて必要な検査や治療を進めていきます。
初診の時、何か注意点などがもしあれば教えてください。
そうですね。受診される前にどこまで治療を希望するのか、不妊治療に対してどのくらい、自分たちの時間とお金をかけられるのかというところもぜひ考えていただけたらと思います。
あとは男性側の検査も並行して進めていくことが好ましいので、この辺りも事前にご夫婦で話し合われてみてください。
その他については、子宮頸がん検査、風疹ワクチンなどの接種歴を事前に確認していただくこと、基礎体温をつけている場合は持参いただけるとスムーズかと思います。
妊活においては、自分たちが何を選択をしていくか、意思決定がすごく大事になってきます。
当院では定期的に無料のWEB勉強会も行なっていますので、ぜひ情報収集しながら妊活を進めていただければと思っています。
今回は色々とお話を聞けて非常に参考になりました。川井院長、ありがとうございました!