患者の意志を尊重したい。選択肢のある治療を|峯レディースクリニック

自由が丘から徒歩30秒の立地にある峯レディースクリニック
2017年6月の開業以来、体外受精はもちろん、不育症の治療も可能なクリニックです。

今回は峯院長に医師としての想いや治療のほか、不育症について詳しくお話をお伺いしました。

患者様と共に悩み、喜べる医師として生殖医療をまい進

まず、峯先生が産婦人科医で生殖医療にすすまれたきっかけは何だったのでしょうか。

父が産婦人科医で産科を自宅で開業しており、両親が夜中も働いている姿を見ていたので、産婦人科医は身近にある職業だったんです。

そこで父や母が『1人目を産んだ人がまたお産に来てくれた』と、嬉しそうに話す姿を聞いていて、素晴らしい職業だなと感じており、医師の道を歩みたいと思うようになりました。

母校の日本医科大学で産婦人科に入局してからはお産や婦人科の癌の勉強をしたりと、非常にやりがいはありました。

大学病院は一通り他の病院に派遣されることが多いのですが、派遣病院で産婦人科を勉強し、大学に戻ってきた際に、生殖医療をやってみないか、とお声がけ頂きました。それが生殖医療にすすむきっかけとなりました。

2017年の開業以来、今年で4年目になりますが、開業の経緯をお聞かせ下さい。

大学病院で患者様が妊娠できた時は本当に一緒に喜んで、うまくいかなかった時は「他の良い治療方法はなかったのか」など、色々葛藤と試行錯誤しながら、まい進していくうちに、凄くやりがいを感じていました。

自然と開業するなら産婦人科の中でも、生殖医療の分野がいい、と思うようになりました。体外受精はもちろん、不妊治療や不育症の患者様を診れるクリニックにしよう、と自分が一番やりたい分野で開業しました。

峯先生は他のARTクリニックでも働いていらっしゃったんでしょうか。

はい。大学病院では外勤日というのが設けられており、外勤日に生殖医療専門の木場公園クリニックで勉強させて頂きました。

専門の先生から勉強したいと大学に要望したところ、木場公園クリニックの吉田先生の元で週に1回、一から勉強させてもらう機会を得ました。吉田先生についていくのは大変でしたが、非常に丁寧に教えて頂いて、吉田先生には本当に感謝してもしきれません。

また、新宿アートクリニックで月に1回程度、勉強させて頂いていたこともあります。 吉田先生は高刺激がメインで、新宿アートクリニックの阿部先生のクリニックは低刺激がメインの施設だったので、両方の良い所を勉強させて頂いた、と感謝しています。

気持ちよく通院して欲しいから。スタッフと考えや想いを共有

峯レディースクリニックの患者様の年齢層はどのくらいの年齢の方が多いのでしょうか?

30代半ばから後半ぐらいの方が一番多い印象です。20代の方や40代の方ももちろんいらっしゃいます。

曜日に関しては月曜日から土曜日まで、朝8時半から診察というのは結構早いという印象なんですが、なぜでしょうか。

仕事前、仕事帰りに通いやすい方が良いと思い、8時半から6時まで診察をできるようにしました。

スタッフと先生を合わせて16名体制ということですが、認定培養士は何名いらっしゃいますか。

認定培養士は4人で、全員認定培養士になります。

チームの連携や、スタッフを教育するにあたって、気をつけている点や大事にしていることは何ですか。

受付、看護、培養と3つの部門があります。

患者様の為という想いは共通でも、業務の内容はそれぞれ違います。やはりコミュニケーションが大事だなと思っています。そのため、朝は一度皆で集まって話をするようにしてます。

あとはPGT-Aやタイムラプスなどの新しい技術や機械を導入する際には、職員全員を対象に勉強会を行うようにしています。全員がクリニックの方針を共有して患者様に接することが大切と考えております

ご来院した患者様が気持ち良く来て、気持ちよく帰って欲しい、という事を凄く大切にしたいので、それをちょっと煩くスタッフに伝えるようにしています。

患者様にアンケートを取ると「受付さんが親切だった」、「看護師さんが優しかった」、「培養士さんがわかりやすく説明してくれ、安心して受精卵を託せた」というのをよく目にするので、私の想いを分かって実践してくれているのは嬉しいですね。

患者様が転院で峯レディースクリニックに通院する場合、治療歴や検査をした項目の結果などを持参すればスクリーニング検査の必要はないでしょうか。

そうですね。人間ドックの結果や、検査結果でも一年以内の物をお持ち頂ければ問題ありません。また、案内についてはホームページにも記載しています。

検査結果の期限がだいぶ前のものであったり、見たい項目が不足している場合は検査をお願いしていますが、全部一からやり直しにはしていません。

子宮筋腫や、子宮内膜症などの女性疾患があった場合は不妊治療と同時進行にできるのか、それとも外科的手術は提携病院などにご紹介されるのでしょうか?

当院は小さいポリープなら取ることはできますが、内視鏡を使ってしっかり手術することは、施設的にできないので、近隣の大学病院や、総合病院があるのでご紹介しています。

武蔵小杉まで行くと日本医科大学の付属病院がすぐ近くにもありますので。あとは私がいた千駄木の付属病院です。そちらでも不育症の特殊な手術を行うには一番良いのでご紹介しています。

体外受精であっても患者様が選べる選択肢は提示したい

体外受精を峯レディースクリニックで行う場合、通院は何回くらい必要になりますか?

当院だと最初ピルを飲んで卵巣をちょっと落ち着かせるようなことをすることが多いです。
そのため通院回数は結構多く、生理が始まったら5日以内くらいのところで1回来て頂いて、ピルの処方のために一回と、月経中に1回、あとはその後、採卵が決まるまで大体3回。なので6回目ぐらいの受診で採卵です。

また、当院では採卵後は胚盤胞という状態まで育った受精卵をいったんすべて凍結しております。凍結胚盤胞移植の妊娠率が最も高いことが知られているため“急がば回れ”をお願いしております。

卵巣刺激の方法はどのような方法でされていらっしゃるのでしょうか。

当院は患者様のAMHや卵巣の機能を見て決定します。

卵巣の機能が低い方は高刺激をしても負担だけが多くなってしまうので低刺激をお勧めします。低刺激と高刺激がいずれも可能な方に対してはどちらも並列して提示するようにしてます。

ただ、実際には刺激方法を自分で選ぶのはなかなか難しい、と逆に迷われてしまう患者様も多いです。

自己注射をすることに抵抗がなく、卵子を沢山採ることで安心感を得たい、と思う方には、高刺激をお勧めします。

一方で負担をかけたくない、副作用や卵巣過剰刺激症候群がちょっと怖い、という方には低刺激をお勧めするようにしております。

こちらで一方的に決めるのではなく患者様とお話しをして、どちらにしたいか、という相談をするように心がけています。

主役はやはり患者様です。どんどん医師の言われるがままになっていて、気がついたら採卵されていた、というよりも、自分でチョイスすることが、前向きな気持ちにつながると考えております。

必要な情報を提示し患者様ご自身で選択できるようきちんとご説明することを心がけております。また、ご自宅でご夫婦で検討できるよう冊子と動画資料を用意しております。

ちなみに胚盤胞移植で貴院の治療成績は何パーセント位でしょうか?

45%ぐらいです。

高齢の方になるとやはりPGT-Aを受ける方は増えると思うのですが、30代後半から40代の年齢の高い方の方がPGT-A受けられますでしょうか?

そうですね、30代後半の方から40代の方はPGT-Aを受ける方が多いですね。やはり反復着床障害の方が多いので。

PGT-Aのリスクとしては、どのようなことがありますでしょうか?

受精卵の中には、将来胎盤になる細胞があるのですが、それをどうしても検査のために6個から10個くらい採らなければいけないので、ダメージはゼロではないと思います。

例え良い判定が出たとしても、3割ぐらいは妊娠しない、あるいは1割ぐらいはどうしても流産してしまいます。ということはもしかしたら検査によるダメージが響いてる可能性があります。

あとはどうしても検査をしているのは赤ちゃんになる細胞をではなくて、胎盤になる方の細胞であるというのは頭の中に入れておく必要がありますね。

男性不妊が見つかった場合は、男性に対する治療は何かありますでしょうか?

当院では女性側がメインになるので、男性不妊のご夫婦にも人工授精をするとか体外受精や顕微授精するような受精のサポートがメインになります。

男性の方でも精索静脈瘤がある場合や、男性側でもっと精子の状態を改善できないか、と考える患者様の場合には、近隣に男性メインのクリニックや大学病院があるので、そちらをご紹介しています。

不育症であっても諦めない。防げる流産もある

峯先生は、日本医科大学にいた時から不育症の患者様にも精通していらっしゃいますが、不育症の患者様も多く診ていらっしゃったのでしょうか。

不育症は日本医科大学の竹下教授の専門分野で、教授より直接指導を受けました。生殖医療を行っているとやはり流産になってしまう方も多いので、不育症で妊娠した方の外来等も担当させて頂き、学んでいくことができました。

私が研修医の時や、派遣病院で勤務している頃は「流産はもう仕方のないこと」「誰でも経験することだから、しょうがなかったね」という、それ以上のことができない時代でした。

しかし、竹下教授の下で避けられる流産も沢山ある、ということを学びました。

生殖医療の上では、せっかく妊娠しても流産してしまう方がいらっしゃるので、その中で私が関わることで流産を防げる、1人でも多くの命がそれで助けることができるのではないか、と思っています。

習慣流産や不育症という言葉がありますが違いはありますか?

いろいろな用語や定義があり、概念が外国と日本で異なる点もあるので混乱してしまいますが、一般的に流産を3回以上繰り返す場合を習慣流産と呼びます

2回以上流産を経験してる方は「Recurrent Pregnancy Loss」と言って、不育症の概念に当てはめて検査の対象になる、と私は考えています。そのため2回流産の経験があれば、不育リスク因子の検査してみてはどうですか、とお声掛けをしています。

1回の流産や、1回も妊娠したことない人であっても「流産するのは嫌なので検査したい。」と仰る方もいらっしゃるのですが、ここについては非常に慎重に説明をさせて頂く必要があると思っています。

と言いますのも、流産のリスクを高める因子は調べてみると、何も問題なく出産できる方でも意外とポツポツ見つかるものなのです。

1回流産した人が不育症の検査をして何かリスク因子が見つかった時に「不育症の治療をするのかどうか?」と悩む必要が出てきます。

不育症の治療には薬剤を使用することも多いので、母体や胎児に何か弊害が起きたときに本当にその治療が必要だったのか?何もしない方が良かったのでなないか?という事にどうしてもなってしまいます。

また、その時に陰性だった項目がその後の検査で陽性になることもあります。そのため、2回目の流産となった時は再度検査をやり直す必要が出てくるかもしれません。

1回流産をされてもう2度と繰り返したくない、という気持ちは、本当にその通りだと思います。
ただこのような懸念もあるため、私は現段階では残念ながら2回以上流産となった場合に検査を行い、その因子が見つかった際にブロック(予防)することが大事だと考えています。

「まだ1度も流産してないけど先に知っておきたい」と予防的に検査を受けられたい方もいらっしゃるんですね。

いらっしゃいます。

患者様の不安な気持ちはよくわかりますが、不必要な医療を行う事は医師としてあってはならい事と考えております。

このような事を説明する際にはなるべく時間をかけ丁寧にと心がけております。
なぜなら、ご説明を差し上げる時に、本当に2回以上流産しないと検査をしてはダメといった風に響いてしまうと、その人にとって嫌な思いやトラウマが残ってしまうので。

流産予防や1回流産をしたので検査をしてほしい、という患者様にはしっかり説明するようにしてます。

具体的に不育症の検査というのは流産の原因として何がわかるものなのでしょうか?

流産の大部分は受精卵の染色体の異常です。受精卵の設計図の異常のようなものが偶発的に起きてしまうもので、それはもう避けようがないものです。

たとえ不育症の因子が見つかってそれを治療したとしても、受精卵の染色体異常があれば、流産してしまうことになるんですね。

残りの2割は血液が固まりやすい因子、抗リン脂質抗体や、血液の凝固因子の異常がある方、あるいは子宮の形の異常がある方や、あるいは糖尿病とか甲状腺の機能の異常、全身の内分泌の病気がある方などです。

また、ご夫婦の染色体に転座というものを持っている方達は流産が他より多くなることが知られているので、それらを見つける検査をすることになります。

検査で流産の原因が分かった場合、不育症の治療しながら妊娠を継続することになると思うのですが、流産のリスクはどれくらい下がるのでしょうか?

そうですね。流産の経験がある方も、不育症の検査も治療もしなくても、実は6割近くの方が最終的には、赤ちゃんを授かることが知られています。

不育の原因が何か見つかって治療が必要な人に治療すると、7割8割とその継続率が上がることが知られています。

一般的な流産率が大体2割ぐらいですので、必要な方に必要な治療するとその自然に起きる流産以外のところはある程度防げるというような印象を持ちますね。

高齢の方になりますと流産率も通常高くなる傾向にありますが、不育症に関しては年齢と相関するのでしょうか?

ご年齢が上がると、どうしても染色体異常の確率はどんどん上がってしまうので、いわゆる避けられない流産も含めると、どんどん上がっていくのではないかと思います。

不育症の方にはテンダーラビングケアで妊娠継続も。

ホームページに”テンダーラビングケアを受けるとちゃんと出産できることもある”と書かれていましたが、これはどのようなものですか。

テンダーラビングケアは、まめにお話を聞いたり、毎週一緒に診察して赤ちゃんの状態を確認するっていう本当にそれだけのシンプルな方法なんです。

一般的には、妊娠がわかった後に子宮の中にちゃんと袋が見えれば、初期は通常2週とか3週、空けてから診察すれば良いと言われていますが、流産のご経験をなさった方は毎日が心配で、毎日超音波をしたい、とおっしゃる方が大部分です。

その不安な気持ちを抱えたまま2週間、3週間、ご自宅で「大丈夫かな。」って思うのは、あまり良くないようだと考えられています。

旦那様ももちろんですが、第三者の医療者が週1回お会いして「赤ちゃん元気ですね。」と、声をかけて話すことが大切なんです

不育症の方の妊娠継続率が6割ぐらいのところ、テンダーラビングケアを併用して他の治療も併用すると7割、8割継続できるというデータが出ています。

医師の何気ない一言が患者様にとって大切だと分かった

先生がこのお仕事を通じて嬉しかったエピソードはありますか?

大学病院の時の患者様で、なかなか自然には排卵しない方がいらっしゃいました。私が不妊治療の担当となり、長く通院されていて、採卵しても良い受精卵を得られず、何度も採卵して妊娠しましたがその後、流産を2回繰り返し、不育症が分かりました。

再度体外受精をして、最終的には双子を妊娠して、ご出産に至ったんですが、そのご夫婦が「流産した二人の赤ちゃんが帰ってきてくれた。」と、凄く喜んでくれたんです。

その患者様に対し、不妊症と不育症と、私のできる限りの治療を尽くさせていただきました。大学病院だったので帝王切開まで担当させて頂いたことがとても嬉しかったです。

その方が無事にご出産なさった後に伺ったことなんですが、若い時に近所の婦人科で『あなたみたいな人は子供なんかできないからね。』と言われたそうなのです。

縁があって大学病院にいらして、私が担当になり、「もう駄目かなと思う時も何度もあったけど、やっとここまでこれました。ありがとうございます。」と、初めてそれまでのお話を沢山されました。

その時「ああ、このご夫婦と一緒に頑張ってきてよかったな。」と、日本医科大学で生殖医療に携わったことを誇りに思えました。だからこそ、その患者様の事は多分一生忘れないと思います。

出会った産婦人科医の一言で、赤ちゃんを諦めてしまうということがずっと続いてしまったら、それは本当に残念なことです。僕らの何気ない一言が、患者様にとって本当に大事なんだな、気をつけなきゃいけないな、って思いますね。

最後にご来院を検討されている患者様にメッセージをいただけますでしょうか。

「ずっと病院にかかっていいか迷っていた」「産婦人科に通うのは怖いかな」と悩まれた末、時間が経ってからご来院する方にお会いします。そういった方の中にはやはりもっと早く相談して頂ければよかったなと思う患者様もいらっしゃいます。
そのため当院では、受診のハードルを下げるためにブライダルチェックを行っています。とにかく一度ご相談に来て下されば幸いです。

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