東大阪市長田駅からすぐの場所にある不妊治療を専門とするIVF大阪クリニック。
前回に続き、福田院長のインタビューをお届けします。
人対人の治療を大切に
Q不妊治療を進めていく中で選択肢が多いと患者さんが迷われてしまうこともあるかと思いますが、その時はどのようにサポートされていらっしゃるのでしょうか?
私はいつも若い医師に「医者が迷うとその迷いが患者さんに移ります」と伝えています。
医者が治療の方針に迷うから、患者さんも迷うことになります。
医師の方が「これとこれどちらがいいですか?あなたが決めてください。」と患者さんにゆだねることは卑怯だと思っています。医師は医学的観点から、どの治療法が患者さんにもっとも適しているかをアドバイスする立場だからです。
今はパターナリズムで医師が患者さんに治療方針を押し付けてはいけないと言われますがそれはちょっと違うんじゃないかなと思うことがあります。
「こちらとこちら、2つの治療方法がありますが、あなたには医学的に考えこちらの方が良いと思いますよ」という話を医者がするべきではないかと…
しかし、医者も少し卑怯というか、この反パターナリズムをうまく利用している面もあると感じています。もし結果が出なかった時に「あなたがそちらを選んだのですよ」というように、患者さんに責任を転嫁できることもあります。当院の医師には、自分が信じる正しいと思う治療法を患者さんに伝えるように指導しています。
また、手術の是非について、子宮筋腫などの手術をするかしないかに関しても、私は手術をした方が良いと私が判断したら、患者さんにも「手術をした方がいいですよ」とはっきりと勧めます。
患者主体の医療と、患者さんにすべて決めてもらう医療とは話が違います…
患者さんと医師は人としては対等の立場ではあるのですが、医療に関してはこちらが専門家なので、専門家の立場として指導的立場にあるとの理念の上に立って患者さんにお話をするようにしています。もちろん、こちらのすすめる治療法を押し付けるということではありません。
クリニックによってはスタッフが多いと情報の共有が上手くいかずに患者さんが戸惑うという話をよく聞きますが、患者さんの情報共有に関してはどうされていますでしょうか?
出来るだけ医局内でその日の診療内容を報告し合い情報を共有をしています。
他の医師が既に患者さん示した判断を尊重し、混乱が起こらないようにしています。方針を変える場合には、患者さんに必ずその根拠を説明します。また変更した理由も必ずカルテに記載し医師間で情報を共有するように心掛けています。
一人の医師に診てもらう方がいいのか?多くの医師がいるクリニックがいいのか悩まれる患者さんも多いですが、先生のご意見をお聞かせください。
この質問は当院でもよく聞かれる質問の一つです。
例えば、一人しか医師がいないクリニックで良い点は、その先生が好きであれば毎回同じ医師に診療してもらえるというメリットがあります。
ただ、医師が一人の場合、仮にほかに良い治療方法があっても、その医師が信じる治療方法が行われ、他の方法が取り入れられる可能性が低くなります。個人の考えに偏り過ぎるというデメリットがあります。
医師が多くいるクリニックであれば、いろんな医師が様々な意見をもっているので、「最近はこっちの治療方法の方がいいらしい」という自分がまだよく知らない情報も入って来易くなり、治療方針を柔軟に変更していけるというメリットがあります。
ですから医師やスタッフの数が多いという事は、一人の医師にずっと見てもらうことができないというデメリットはありますが、良い面もたくさんあります。
先生が治療をされる際に心がけていらっしゃることは何でしょうか?
痛みのない医療を提供することを心がけています。痛みのない医療が医療の基本ですから。
例えば、麻酔を掛ける処置であっても、麻酔が十分に効く前に操作を開始する医師がいますが、それでは患者さんに痛みの記憶が残ります。私は必ず麻酔が十分に効いたことを確認してから治療を始めるようにしています。
採血や注射なども出来るだけ痛みの少ないようにして注意を払っています。
採卵時に静脈麻酔を使いたくないという患者さんの希望があれば、局所麻酔であっても患者さんが何も感じないぐらいの痛みのレベルで採卵を行います。
もちろん医師の技術力の差で患者さんに与える痛みは変わってきます。医師は患者さんのことを自分自身に置き換え、痛みを最小限とする技術を身に付けるよう日頃から心掛けることが大切だと思っています。
患者さんは痛みで恐怖感を覚えますから、医療側がそのことを理解し、痛みを最小限にする努力をすることが必要です。
採卵ではできるだけ多くの卵子を採るように心がけています。採卵の時に、一つでも多く採卵してあげようと思って臨むのか、大きな卵胞だけ吸引すればいいと思って臨むのでは、自ずと得られる卵子の数は違ってきます。患者さんは一つでも多くの卵子を待たれていますから。
丁寧な採卵をすることで5個のはずが、小さいものにも穿刺を行い7個になることもあります。
当院は4割が40代の患者さんですから、年齢とともに採卵数が減りますから、いかにしてより多くの卵子を採ることができるかを常に心がけています。
IVF大阪クリニックの様々な取り組みについて
ミニマムステイIVFという取り組みをされていますが、こちらはどのような取り組みなのでしょうか?
今は利用者が減りましたが、昔は体外受精の施設が少なかったため、北は北海道、南は九州まで様々な場所から患者さんが来られました。
遠方から来られた患者さんに、出来るだけ来院日数を少なくして体外受精を行うためのシステムが、ミニマムステイIVFです。ですから、初診の日に検査はすべて行い、地元のクリニックへの紹介状も準備し、次に来られる日が採卵の日になるという、最小限の来院で体外受精が受けられるというプログラムです。
今は全国で600か所の体外受精クリニックがあるので利用者は昔と比べるとかなり少なくなりました
ただ今でも岐阜や福井、広島・鳥取から通院されている方もいらっしゃいますし、四国から通われている方もたくさんいらっしゃいます。
東京から通院をご希望の方に関しては、東京の知り合いのクリニックに卵胞モニターをお願いしています。
ミニマムIVFの場合は、全国ほぼどこかに私の知り合いの先生がおられますので、超音波モニターだけは地元のおクリニックにお願いすることになります。
IVF大阪クリニックで長年、統合医療を提供されているのはなぜでしょうか?
西洋医学だけでは補えない部分を統合医療で補完するために取り入れています。
気持ちの持ち方などのメンタル面のサポートをはじめ、鍼灸やレーザー・漢方など様々な統合医療を導入しています。
特にレーザー治療に力を入れています。身体の深部にレーザーを照射することによって子宮や卵巣の血液循環を良くすることが可能になります。
ただ統合医療は西洋医学のような即効的な役割はないので、西洋医学を提供しながら、側面からサポートする形で、少しでも妊娠に近づける可能性のあるものを取り入れています。
これからの不妊治療や患者さんへの先生の思いをお聞かせください
新しい治療手段の一つとしては、子宮や卵巣にPRPを使っていきたいと思っています。
今や、多くのクリニックですべての患者さんに全胚凍結や胚盤胞移植が行われます。
当院では、昔から行われている2日目移植や新鮮胚移植、自然周期凍結胚移植など、その人本来に備わった身体の力を利用して治療をする方法を再評価し、新しい治療方法にこだわらず、個々の患者さんに最適の治療を提供したいと考えています。
患者さんがどのような治療を受けたいのか?患者さんの思いや希望をベースとして、最新で最良の医療を提供できる医療機関でありたいと考えています。
常に患者さんの立場に立って、その患者さんに最適な医療を、安全安心な環境で提供したいと思っています。
最後に不妊治療を始めようとクリニック選びに悩まれている方へメッセージをお願いします。
地理的には、自宅から近いクリニックをお薦めします。あまり遠いと通院だけで疲れてしまいますから。検査などの場合も、家から近いと、肉体的にも精神的にも楽だと思います。
診療内容については、今の時代はまずネットで検索されると思います。最初から原因がはっきりしている場合は、その分野の特意なクリニックに行かれることをお薦めします。
初めての診療であれば、ホームページで自分のフィーリングに合ったクリニックを選ぶのも一つだと思います。友人などからの口コミも信頼できる情報だと思います。
最終的には信頼できる医師を選ぶことが一番大切です。信頼関係が出来ると、医師には「なんとかしてあげたい」という思いが生まれますし、患者さんと医師との信頼関係があって、初めてすべてが成り立つと考えています。信頼関係が築けるかどうかはやはり相性もあると思います。
最初はわからなくても、何度か通院をしてこの医師なら信頼できるという感覚を持たれたら、その医師に全幅の信頼を置くことが良い結果につながると思います。医者は、自分が頼られていると感じると、患者さんのために全身全霊をかけて頑張ろうと思います。
また、クリニックの清潔さやスタッフの対応も大切だと思います。クリニック全体が醸し出す雰囲気を感じてください。ひょっとすれば、それがすべてかもしれません。医師や看護師の説明する態度、受付の対応、クリニックの構造、すべてが患者さんの立場にたって考えていることが感じられるクリニックを選ぶのが最良の方法です。
インタビュー後記
エントランス入って正面に1階から3階まで吹き抜けの、IVF大阪クリニックのシンボル“癒しの滝”がそびえています。静止したオブジェではなく、命の源である水が流れ、人の心を癒し、マイナスイオンをたっぷり供給するものです。
また1階に採卵や移植、処置のスペースが配置されています。入ってすぐに処置スペースを置くことで患者さんがノーメイクで来た際に極力他の人と顔を合わさなくていいように配慮と、もし救急搬送が必要な時にも救急出口と直結するように設計されています・外来診察室という形にされたそうです。
少しでも患者さんにリラックスしてもらえるような配慮があちこちに見られるクリニックで、ここにも患者さんを思う福田院長の思いを感じました。