東大阪市長田駅からすぐの場所にある不妊治療を専門とするIVF大阪クリニック。
体外受精での治療はもちろん、PGT-A検査をはじめPRP(血小板濃縮液)療法などの最新の治療や卵管を治療する卵管鏡下卵管形成術(FT)、さらに漢方・鍼灸・レーザーなどの統合医療も取り入れ、あらゆる面から不妊治療をサポートされています。
今回は福田院長に医師としての思いや不妊治療について、そしてIVF大阪クリニックで新たに取り組んでいるPRP(血小板濃縮液)療法についても詳しくお話を伺いました。
どうすれば患者様に「妊娠していただけるのか?」を追い続けて
まず、福田先生が生殖医療に進まれたきっかけは何だったのでしょうか?
京都府の舞鶴市民病院勤務時代に、子宮外妊娠で両方の卵管のない体外受精適応の患者さんに出会ったのがきっかけです。舞鶴市民病院から徳島大学に紹介をし、そこで体外受精を受けられ徳島大学での2例目の成功例、日本では体外受精6番目のお子さんになりました。
その後、1984年に京都大学の大学院に進学した際に、徳島大学から京都大学に戻られた森崇英先生と再会しました。研究テーマは舞鶴市民病院から徳島大学に体外受精の患者さんを紹介した縁もあり生殖医療としました。
京都大学産婦人科の体外受精黎明期のメンバーとなり1987の京都大学の体外受精の立ち上げに参加しました。
その当時は体外受精には批判的な声も多く、マスコでは倫理的な観点から様々な議論のあった時代でした。
福田先生の不妊治療に対する理念や思いついてお聞かせください
やはり最終ゴールは「妊娠して出産していただく」ということです。
まずは、当然ですが自分自身の卵子で妊娠していただく、ただ最終的に自己の卵子で妊娠が難しい場合には卵子提供のお話もいたします。また、自身の子宮が使えない人には代理母という選択肢のお話をいたします。
どうしても自身の卵子で妊娠の難しいような方には、少し早い時期から特別養子縁組などの情報提供も行っています。
このようになんとか手を尽くしてお子さんを持っていただきたいと考えています。もちろんお二人の生活を選択することを否定するものではありません。
そして不妊治療で産まれたお子さんが、不妊治療で産まれたことを普通にお話し出来る世の中にしていきたいと思っています。先の日本IVF学会では日本で初めて、体外受精で産まれたお子さんに公の場でお話をしていただきました。(朝日新聞 朝刊 2021/10/2、朝日新聞デジタル 2021/10/8にて掲載)
患者さんの希望につなげる治療に日々挑戦
PRPの卵巣内投与についてお聞かせください
早発閉経や高齢などが原因で卵巣の機能が低下し排卵難しく悩まれている患者さんは多くおられます。2年前のアメリカ生殖医学会で卵巣内にPRPを投与すると効果があるとの報告を目にしました。
現在、早発閉経には治療方法がないため、お薬を飲んで月経を起こすしか方法がありません。しかしこの方法は、服薬中に卵巣が休まることを利用し、自然に卵胞が発育することを待つだけの待機療法でしかありません。
そこで、PRPの卵巣内投与を当院でも実施する決意をしました。
ちょうどその頃テルモ社が日本で最初のPRP抽出装置を製造しており、2020年の終わりにテルモの第1号機の厚生労働省の承認が下りました。当院では、子宮内のPRP投与と、卵巣内のPRP療法の厚労省の承認を得ております。卵巣内のPRP投与の効果が発現するには数か月かかるため、まだ結果は出ていないですが、日本製の機器で抽出したPRPを使えるのは、現時点では日本国内で当院だけになっています。
他のクリニックで行っているPRPは、外国製の器械で抽出したものを使用するか凍結乾燥させたものを使っています。凍結乾燥させたものは再生医療法の適用を受けず簡単ですが、その効果は生のPRPと比較すると劣ると考えられています。
当院で行っているPRPは生の血小板や幹細胞が入っているため、再生医療法の適用となり手続きは大変なのですが、やはり生きた細胞が入っているため、その効果に違いがあると考えています。
なぜテルモ社の機械導入をIVF大阪クリニックさんで行うことになったのでしょうか?
卵管鏡下卵管形成術(FT)を私が日本で最初に外来で行ったことがきっかけで、当院が初めての国産のPRP抽出器を使えることになりました。というのは、このFTカテーテルを作っているのがテルモ社だったということです。
未成熟卵の培養を最初に取り入れられたのも福田先生とお伺いましたが、未成熟卵の培養についてお聞かせください
1999年から未成熟卵の体外受精(IVM)に取り組み、2000年に日本で初のIVMによる出産に成功しました。すでに150名の赤ちゃんが誕生しています。IVMでは日本をリードしており、世界的にもIVM実施クリニックとしてよく知られています。
49歳の女性の妊娠報告をブログで拝見したのですが、49歳で採卵されての移植なのでしょうか?何か特別な治療をされたのでしょうか?
49歳で採卵して新鮮胚移植での妊娠です。
今は凍結胚全盛の時代ですが、決してそれが一番良いわけではありません。当院は多くの新鮮胚移植を行っています。すべての胚を凍結するという方針はとっていません。
採卵時に自分のホルモンで内膜が厚くなるのを使わない手はないと思います。
もちろん卵巣過剰刺激が起こった場合には凍結しますが、そうじゃない場合は、自分で自分の子宮が妊娠に備えた状態を作っているのですから、その周期に新鮮胚で移植しています。
当院では凍結胚移植でも自然周期移植が7割です。自然排卵して自分のホルモンで自分の内膜を作った方が自分の身体には一番あっています。自然周期排卵であれば薬が必要ありませんから。それに引き換え、ホルモン補充周期の移植では、患者さんは薬剤の副作用を気にしなければならないと同時に多数の薬剤を服用しなければならず大変です。
また自然周期移植の方が出産時の合併症が少ないという論文も出ていますし、多くの産科医も実感しているということです。
49歳の女性の妊娠例で2日目に移植されているのはなぜなのでしょうか?
この年齢ではなかなか胚盤胞までは到達しません。ただ身体の外では胚盤胞に到達しなくても、身体の中では育つ場合もあるのです。ですから採卵後2日目や3日目の分割胚の時期に戻してあげて身体の中で育ててもらいます。
当院では過去に47歳で4人の出産歴もあります。この患者様もみなさん分割胚の移植であり胚盤胞での移植ではありません。体外では胚盤胞まで育たないのですから。もしこの方々に胚盤砲移植を試みていたら、この4人の妊娠は起こらなかったことになります。
試験管内で胚盤胞まで育たないと身体の中でも胚盤胞まで育たないと思われがちですが、そうではありません。
胚盤胞まで育ててから移植しようとすると、胚盤胞まで育たないと妊娠の可能性はゼロになってしまいますが、初期胚(分割杯)で移植したものが体内で育つ可能性があるわけですから、それが妊娠に繋がる可能性が出てきます。