妊活・不妊治療について考えるとき、誰もが気になるのがお金のこと。
不妊治療は高額なイメージがありますが、治療内容や期間、病院によって金額は大きく変わります。
今回は統計などをもとに、何にいくらくらいかかるのかを見てみましょう。
また、いくら準備しておけばいいのかや、費用を抑えるためのポイントもお伝えします。
妊活を始めるときや、ステップアップを考えるときの参考にしてみてください。
なお、菅総理大臣は不妊治療への保険適用を拡大する考えを示しており、今後、治療費や助成制度について変更があるものと考えられます。(2020年11月30日現在)
新しい情報が発表されましたら、「妊活とお金」のコラムでお知らせします。
この記事の監修医師
産婦人科専門医 / 生殖医学会生殖専門医
順天堂大学医学部産婦人科客員准教授
順天堂大学医学部卒業。順天堂大学産婦人科先任准教授(助教授)、順天堂大学医学部附属浦安病院リプロダクションセンター長を歴任。世界初となる公費助成の「卵子凍結保存プロジェクト(千葉県浦安市)」の責任者。2019年メディカルパーク横浜を開院。
目次
みんなはどれくらい妊活・不妊治療にお金がかかったの?
妊活・不妊治療をするとなるとお金がかかる印象ですよね。実際にはどれくらいお金がかかるのでしょうか?
妊活ボイスの「妊活・不妊治療」に関するインターネット調査によると、妊活全般にかかった費用の平均は約35万円という結果でした。この数値には、妊活サプリや排卵検査薬を購入したけれど不妊治療は経験していない、という人なども含まれています。
人工授精・体外受精・顕微授精のいずれかを経験した人に限ると平均費用は約134万円と一気に上がります。
さらに高度不妊治療(体外受精・顕微授精)の経験者となると平均費用は193万円まで上昇し、そのうち300万円以上かかった人は16.1%います。
このように、妊活・不妊治療とひとことで言っても、段階によって費用は大きく異なり、治療が進むにつれて負担が大きく膨らむことがわかります。
さて、これらは妊活・不妊治療費の総額ですが、一体何にいくらかかってこんなに高額になるのでしょうか?
不妊治療の内容と費用の詳細は?
では、不妊治療にかかる費用を個別に確認してみましょう。
不妊検査については保険が適用されるものもあり、それほど負担は大きくありません。(一部の検査は自費診療となり、クリニックによっても異なります。)
タイミング法は、エコーや尿検査によって排卵日を予測する方法です。排卵誘発剤を使うかどうか、卵胞の成長具合を何回確認するかなどによって費用が変わります。
人工授精以上の治療は自由診療のため、病院によって金額がまちまちです。
人工授精自体は多くの病院が1回1万円〜2万円程度で行っているようですが、排卵誘発剤を使ったり、人工授精後に黄体ホルモン剤を服用したりと、その前後でもお金がかかります。
体外受精や顕微授精については病院や治療内容、採卵できた数などによって金額が大きく変わります。
1回の採卵で複数の卵子を採取するために卵巣刺激を行う場合が多く、排卵誘発の方法によっても費用が異なります。
凍結融解胚移植は、以前に凍結した胚を解凍して胚移植を行います。採卵が不要な分、費用は抑えられます。ただし、受精卵を融解するための費用がかかります。
治療費以外にかかる費用はどんなものがある?
検査や治療以外にもいろいろとお金がかかります。主なものを見てみましょう。
交通費
意外とお金がかかるのが病院への交通費です。家や職場から近くても回数が増えると負担も大きくなります。中には希望するクリニックに通院するため新幹線や飛行機を使う人もいます。
サプリメント
葉酸や鉄、ビタミンD、亜鉛など、妊活・妊娠中に必要とされる栄養素を食事だけで摂るのは大変なので、サプリメントを利用する人も多いです。だいたい月に3000円〜8000円程度かかります。
漢方薬
体質改善のひとつとして利用されることが多い漢方薬。保険が適用される場合には月に数千円程度、保険が適用されない場合には月に数万円かかる場合もあります。
整体・鍼灸
妊娠に向けて体を整えるために利用される整体や鍼灸ですが、保険は適用されません。施術内容や頻度にもよりますが、月に数千円〜数万円程度かかります。
これら以外にも、体を温めるための温活グッズを買う、ヨガなどの運動を始める、パートナーと子授け温泉へ行くなど、妊活・不妊治療にいいと言われるものはたくさんあります。
私自身も不妊治療を経験したので、妊娠につながりそうなことは全部試しておきたいという気持ちはよくわかります。
でも、お金も時間も限りがあります。一番大事な「治療」にしっかりと向き合えるよう、お金のつかいどころにメリハリをつけましょう。
不妊治療のためにいくら準備しておけばいい?
これから妊活や不妊治療を考える人は、まずは生活費の半年分、余裕があれば1年分を目標に貯蓄をしてください。でもこれはあくまでも「不測の事態に備えるお金」です。ここからさらに、何に使ってもいいお金として200万円の上積みを目指しましょう。
200万円あれば、一通りの不妊検査からタイミング法、人工授精とステップアップして、体外受精にもチャレンジできます。不妊治療にそんなにお金がかからなければ、住宅購入やレジャー費などに充てることもできます。
では200万円貯まるまで不妊治療はできないのかといえばそうではありません。不妊治療費に対する助成制度を申請し、ボーナスなども上手に使いながら治療を始めることも可能です。まずは少しずつでも貯蓄するクセをつけることが重要です。
不妊治療の費用を抑えるためにできることとは?
不妊治療の費用を抑えるために一番重要なのは、治療を早く始めることです。
そして、適切な治療を早く始めるためには、夫婦そろって検査を受けることです。
2017年の世界保健機関(WHO)の調査によると、不妊症のうち、男性のみに原因がある場合が24%、男女両方に原因がある場合が24%で、合わせて約半数は男性にも原因があるとされています。
早く原因を突き止め、適切な治療を受けることが妊娠への近道です。
また、正確で新しい情報をキャッチすることも重要です。
例えば、今年度(2020年度)は新型コロナウイルスの影響から、特定不妊治療費助成制度の申請要件が緩和されています。
また、菅総理大臣は不妊治療の保険適用拡大を目指しており、保険が適用されるまでの対応策として助成制度の拡充が検討されています。
自社の社員向けに不妊治療支援制度を創設する企業も増えてきています。
こういった制度は、自分で探し、申請しなければ利用できないものがほとんどです。
使える制度を見過ごさないようにして、賢く費用を抑えましょう。