不妊治療の助成金、いくらもらえる?令和2年度の特例もチェック!

不妊治療を始めるときやステップアップを考えるときにネックになるのが治療費です。

NPO 法人 Fineの「不妊治療の経済的負担に関するアンケート Part2」の調査によると、経済的理由で次の段階の治療に進むことを躊躇、延期したことがあると答えた人は、「非常にある」、「ややある」を合わせて81.0%にものぼります。

そんな状況を打開するため、政府は不妊治療への保険適用拡大や助成制度の充実を検討しています。

今回は令和2年12月10日現在の助成制度についてお伝えします。

令和2年度は新型コロナウイルスの影響を受けた家庭が多いことから、条件が緩和されていますので、その点も確認しておきましょう。

なお、助成制度については令和2年度中にも変更される予定です。新しい情報が発表されましたら、「妊活とお金」のコラムでお知らせしますので、最新の情報をチェックするようにしてください。

国の助成 特定治療支援事業(旧特定不妊治療費助成事業)

不妊治療に対する助成制度のベースとなるのが国の助成制度である特定治療支援事業です。

治療費が高額になりがちな体外受精や顕微授精を対象にしています。
まずは制度の概要を確認しておきましょう。

※がついているところは令和2年度に限り条件が緩和されています。
令和2年度の特例については後ほど説明します。

これは、条件さえ満たせば全国どこに住んでいても一律で受けられる助成です。

さらに都道府県や市区町村によっては独自に助成を行っているところもあり、国の助成制度に上乗せした形で助成を受けることができます

つまり、同じ治療をしても住んでいる地域によって受けられる助成の内容が異なるということです。

自治体独自の助成にはどんなものがある?

自治体独自の助成には大きくわけると3つの種類があります。

1つ目は、国の助成制度への上乗せや条件緩和。

所得制限の緩和や助成金の上乗せ、助成回数を増やすなど、自治体によって様々です。

例えば、東京都では所得制限が905万円に緩和されています。また、2回目以降の助成限度額は治療ステージによっては5万円または10万円上乗せされます。

2つ目は、不妊検査や一般不妊治療への助成。

一般不妊治療とは、特定不妊治療に該当しない、タイミング法や人工授精などの治療をいいます。

京都市では一般不妊治療に対して、自己負担の2分の1(上限6万円、人工授精を含む場合は上限10万円)が助成されます。
金沢市では夫婦で不妊検査を受けた場合、自己負担の2分の1(上限2万円)が助成されます。

3つ目は、不育症への助成です。

不育症とは、妊娠はするものの流産や死産を繰り返すことをいいます。出産まで薬や注射を継続する必要があるため、精神的な負担だけでなく経済的な負担も大きくなっています。

福島県では1回の妊娠につき15万円まで、回数制限なしで助成しています。

所得≠収入!所得制限についてのよくある誤解

助成制度について誤解されていることが多いのが所得制限についてです。
特定治療支援事業における所得制限は、一部の自治体を除き、夫婦合算で730万円です。この所得というのは収入とは違います。

会社員の方を例にすると、収入というのは給与の額面金額(年収)のことです。一方、所得というのは、収入から給与所得控除を引いた金額をいいます。

給与所得控除というのは、給与所得者にとっての経費の代わりになるもので、収入金額に応じて金額が決められています。
また、給与の他に所得がある人はそれらも合算した金額です。

自分の所得金額は、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」や、住民税額決定通知書の「総所得金額」で確認することができます。自営業の方は、確定申告書の所得金額の合計を確認しましょう。

特定治療支援事業の所得判定は、ここから社会保険料相当額として一律8万円を差し引き、医療費控除や雑損控除、小規模企業共済等控除などの諸控除があればそれらも差し引いた金額で行います。

iDeCoで積み立てをしている人は、掛け金全額を小規模企業共済等控除として差し引くことができますよ。

夫の給与収入が600万円、妻の給与収入が450万円の場合を例に見てみましょう。
(令和元年の所得を使って令和2年度中に申請する場合)

給与収入が600万円の場合の給与所得控除額は174万円、給与収入が450万円の場合の給与所得控除額は144万円なので、
夫の所得=600万円-174万円=426万円
妻の所得=450万円-144万円=306万円 です。

そこからそれぞれ社会保険料等相当額として8万円ずつ差し引けるので、
(426万円-8万円)+(306万円-8万円)=716万円 となり、助成を受けることができます。

前年の医療費控除額が大きい人やiDeCoの積み立てをしている人はここからさらに差し引けるので、その分収入が多くても助成の対象となります。

不妊治療の助成金に関わる、令和2年度の特例とは?

令和2年度は新型コロナウイルスの影響を受けた家庭が多いことから、条件が緩和されています。

(1)対象者
「治療期間の初日における妻の年齢が 43 歳未満である夫婦とする」とされていますが、令和2年3月31日時点で妻の年齢が42歳である夫婦で、令和2年度に新型コロナウイルスの感染防止の観点から治療を延期した場合は、妻の年齢が44歳に到達する日の前日までの間に限り、対象者と取り扱う。

(2)通算助成回数
令和2年3月31日時点で妻の年齢が39歳である夫婦で、新型コロナウイルスの感染防止の観点から治療を延期した場合は、「初めて助成を受けた際の治療期間における妻の年齢が41歳未満であるときは、通算助成回数を6回までとする」として取り扱う。

(3)所得要件
①夫妻合算の前年の所得(1月から5月までの申請については前々年の所得)が730万円以上である場合でも、新型コロナウイルスの影響により所得が急変し、本年の所得の合計額が730万円未満となる見込みの場合は、助成の対象として取り扱う。(自治体の担当窓口に相談してください)

②新型コロナウ イルスの感染防止の観点から治療を延期し、申請が6月以降となった場合に、 前々年の所得が 730 万円未満であって、前年の所得が 730 万円以上となる夫婦については、前々年の所得をもって助成の対象として取り扱う。

自分たちが助成の対象となるのかは自治体の窓口で相談してみましょう。課税証明書などが必要な場合には少し費用がかかりますが、相談自体は無料で受け付けています。

企業独自の支援制度もチェック

数年前から、不妊治療に対する支援制度を創設する企業が増えてきています。支援内容の詳細は企業により異なりますが、治療費の支援や休暇制度の充実、異動などへの配慮などを行っている企業が多いようです。

国の制度も自治体の制度も企業の制度も、基本的には自分で調べて申請しなければ利用することができません。


不妊治療の経済的な負担を少しでも減らすため、自分たちに使える制度がないか、一度調べてみましょう。

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