昨年末からニュースになっていた不妊治療費の助成金の拡充。
2021年(令和3年)1月28日に国会で第三次補正予算が可決され、無事成立しました。
そこで今回は気になるその内容を確認してみましょう。
不妊治療の助成金、どう拡充された?内容をチェック!
今回拡充されたのは、国が行う「不妊に悩む方への特定治療支援事業」。
以前は特定不妊治療費助成事業と呼ばれていました。
政府は2022年(令和4年)4月から不妊治療の保険適用を目指しており、今回の拡充はそれまでの暫定措置という位置付けです。
それでは拡充後の内容を確認してみましょう。
(1)対象治療法
助成の対象となる治療は、体外受精と顕微授精(特定不妊治療)です。
(2)対象者
対象者は特定不妊治療以外の治療法によっては妊娠の見込みがないか又は極めて少ないと医師に診断された夫婦です。
改正前は法律上の婚姻をしている夫婦(治療期間の初日における妻の年齢が43歳未満である夫婦)のみが対象でしたが、改正により事実婚の夫婦も対象となりました。
(3)給付の内容
①給付金は、1回30万円
凍結胚移植(採卵を伴わない)および採卵したが卵が得られないなどのため中止したものについては、1回10万円
②男性不妊治療(精子を精巣または精巣上体から採取するための手術)を行った場合は、30万円
これまでは、初回のみ30万円で2回目以降は15万円でしたが、改正後は2回目以降も30万円を受け取れます。
しかも①と②は合わせて受給することができるので、男性不妊治療の後で体外受精をした場合は、最大60万円を受け取ることができます。
(4)助成回数
初めて助成を受けた際の治療期間初日における妻の年齢が、40歳未満であるときは1子ごとに通算6回まで、40歳以上43歳未満であるときは1子ごとに通算3回までです。
1子ごとに最大6回受け取れるので、不妊治療により子どもを持った人が2人目、3人目にもトライしやすくなります。
(5)所得制限
所得制限なし。
所得制限がなくなったことは今回一番大きい変更点と言えるでしょう。
これまでは所得制限のために助成金を受け取れなかった夫婦も少なくありませんでしたが、その心配もなくなりました。
(6)拡充の適用
今回の改正は、2021年(令和3年)1月1日以降に終了した治療から適用されます。
妊娠判定を行うまでを1回の治療と考えるので、2020年12月に採卵と胚移植をしていても、2021年1月1日以降に判定日があった治療は改正後の内容の適用対象になります。
助成金を上手に活用するには?
体外受精・顕微授精1回につき30万円もらえると経済的にかなり助かります。
ただし、助成金がもらえるのは申請してから数か月後。
体外受精にトライするためには、まずは1回分の治療費を自分で用意する必要があります。
1回分の治療費を準備できれば体外受精にトライしてみて、治療が終了したらすぐに助成金を申請します。そして、助成金が振り込まれるまでに貯蓄をしておけば、振り込まれた助成金と合わせて次の体外受精にトライすることができます。
このサイクルだと少ない自己負担で1年間に3〜4回体外受精にトライできる計算になります。また、複数の受精卵が凍結できた場合には、凍結融解胚移植によりさらに経済的な負担を減らすことができます。
すぐに不妊治療を始めるべき?保険適用まで待った方がいい?
不妊治療でいちばん大切なのは1日でも早く治療を始めることです。
そう考えると、助成が拡充された今、保険適用を待つのはあまりおすすめできません。
他にも、理由があります。
公的医療保険が適用されることになると、自己負担は3分の1になります。
しかし、不妊治療と一口に言っても、その治療内容は女性、男性それぞれの状況などに合わせたオーダーメイドです。何通りもある治療法のうちのどの治療法が保険の適用対象となるのかによっては、治療の選択肢が狭まったり、治療費の負担が減らなかったりすることも考えられます。
また、保険適用により経済的負担が減ることで治療を望む人が増え、病院での待ち時間が増えることも考えられます。
さらに、不妊治療に公的医療保険が適用されることになった場合、現在の国の助成制度はなくなる可能性が高いです。というのも、今回の助成拡充は医療保険適用までの暫定措置とされているからです。
自治体独自の助成がなくなるのか継続されるのか縮小されるのかはわかりませんが、仮に自治体独自の助成もなくなってしまった場合は、現在の助成内容が手厚い自治体にお住まいの人ほど自己負担が増える可能性があります。
保険適用については現時点(2021年2月8日)ではまだ何も決まっていないため、どちらが経済的負担が少なくなるかはわかりません。
しかし、助成が拡充された今、これまで経済的負担がネックになって体外受精へのステップアップをためらっていた人は、トライしてみるチャンスです。
医師やパートナーと相談しながら、体調や仕事との両立も考えながらぜひ前向きに検討してみてください。