みなさん、子宮頸がん検診をきちんと受けていますか?
20代や30代だと、がん検診と言われてもピンとこないかもしれません。
しかし、子宮頸がんに罹患すると、妊娠しにくい体になることもありますので、将来的に妊娠を望む場合はきちんと検査を受けておく方が良いでしょう。
今回は、子宮頸がんとはどういうがんなのか?また、検診するにはどのようにすれば良いのかなどをお伝えしていきます。
この記事の監修医師
産婦人科専門医 / 生殖医学会生殖専門医
順天堂大学医学部産婦人科客員准教授
順天堂大学医学部卒業。順天堂大学産婦人科先任准教授(助教授)、順天堂大学医学部附属浦安病院リプロダクションセンター長を歴任。世界初となる公費助成の「卵子凍結保存プロジェクト(千葉県浦安市)」の責任者。2019年メディカルパーク横浜を開院。
目次
子宮頸がんって?どんな「がん」なの?
20代から受診することが推奨されている子宮頸がん検診。そもそも子宮頸がんとはどのようながんなのでしょうか?
子宮は、みなさんがご存じのように赤ちゃんを育てるための臓器です。
子宮は下から1/3、膣につながる部分を子宮頚部、残り2/3を子宮体部といいます。
子宮頸がんはその子宮頚部に発生するがんの事をいいます。
子宮頸がんは子宮頚部の中でも、入口あたりに発生することが多いと言われています。
通常、子宮頸がんは時間をかけてゆっくりと増殖していきます。
子宮頸がんの場合、がんが発見される前段階の状態で子宮頚部にがんになる可能性のある細胞が増殖していきます。
この細胞を異形成と呼びますが、子宮頸がん検診を定期的に受けることで、このがんになる手前の異形成と呼ばれる細胞を見つけることが可能になります。
早い段階で見つけることで、治療も子宮全体を摘出することなく、一部の切除だけで済む場合があります。
異形成の段階では特に症状がなく、おりものの変化や出血、痛みなどを自分で気が付くことは難しく、定期的な子宮頸がん検診が大切になってきます。
子宮頸がんは、20代から30代の女性で発生するケースが増えてきています。
そのため、20代からの検診が推奨されています。
子宮頸がんは決して珍しいがんではなく、2018年だけでも2871人の人が亡くなっています。(人口動態統計2018年より)
一生涯でみると、73人に1人が子宮頸がんと診断されています。
子宮頸がんの原因は?
子宮頸がん発生の原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染しその感染状態が続くことが原因と言われています。
ヒトパピローマウイルス(HPV)は性交渉によって感染すると言われているウイルスで、決して珍しいウイルスではありません。
また、性交渉の回数や性交渉を持った人数に関係なく、一度でも性交渉の経験があればヒトパピローマウイルス(HPV)に感染している可能性があります。
通常はウイルスに感染しても免疫機能により排除されることがほとんどです。
ただし、一部の人でウイルスが排除されずに、そのまま感染状態が持続しがん化することがあります。
また、喫煙により子宮頸がん発生の可能性が高まるとも言われています。
一度でも性交渉の経験がある場合は、20歳になったら2年に一度必ず子宮頸がん検診を受けるようにしましょう。
子宮頸がんが妊娠に及ぼす影響とは?
子宮頸がんになった場合、妊娠に大きな影響を及ぼすことになります。
軽度異形成や中等度異形成の細胞が見つかった場合は、経過観察で様子をみることも多いですが、高度異形成の細胞が見つかった場合は、妊娠を望んでいる場合は妊孕性の温存も視野に入れながら治療が勧められることになります。
ただし、高度異形成よりさらに進んだがんの状態で見つかった場合、子宮頸がんの進行具合にもよりますが、場合によっては妊孕性の温存が難しく、子宮を全て摘出する必要も出てきます。
がんの大きさが小さいなど一定の条件を満たしていれば、妊孕性のために子宮の一部を温存することも可能です。
ただし、本来なら子宮摘出が望ましく、その後のリスクを十分に医師と相談して判断していく必要があります。
妊孕性温存のために、子宮の一部を温存して最小限の切除ですます場合もあります。
ただし、その場合は子宮頚管が短くなっており、妊娠した場合は、流産や早産しやすくなり妊娠後も注意が必要になってきます。
また、妊娠そのものがしにくくなる傾向もあると言われています。
妊婦検診の初期に子宮頸がん検診を受け、そこで子宮頸がんがみつかる場合もあります。
がんの進行具合によって治療方針は変わってきますが、場合によっては正産期(37週以降)より早い段階で、赤ちゃんの十分な成長を待たずに帝王切開が必要になる場合もあります。
がんの進行状況や発見の時期によっては妊娠そのものを諦めなくてはいけない場合もあります。
定期的に子宮頸がん検診を受けることで、子宮頸がんになる手前の段階で異形成の細胞を見つけることが出来たり、妊娠中に子宮頸がんが見つかるという状況を回避することが可能になります。
子宮頸がん検診を無料で受けるには
お住いの市町村から検診のための無料クーポンが送付されてきますので、そちらを使って子宮頸がん検診を受けることが出来ます。
追加の費用の有無はお住いの自治体での検診によって変わってきますので、一度ご自身のお住いの自治体に詳しくは確認してみてください。
クーポンは通常2年に1回送られてきますが、もし手元にクーポンが届いていない場合や、期限が切れてしまっている場合は、お住いの地域の自治体に確認してみましょう。
保健センターなどで管理されていることが多いですが、どこに確認すればいいのかわからない場合はこちらに地域別にまとめられていますので、お住いの地域の最寄りの機関を探してみてください。
子宮頸がん検診を受けられる医療機関
自治体からのクーポンで検診を受ける場合は、集団検診かもしくは指定の医療機関で検診を受けることが出来ます。
会社の企業健診で受けることが出来る場合もありますので、その場合は担当部署に訪ねてみましょう。
予約方法などは自治体によって違いますので、一度各自治体に確認してみてください。
また、同じ県であれば隣の自治体のクリニックで子宮頸がん検診が受けられる場合などもありますので、一度HPなどを確認してみましょう。
すでに不妊治療に通っている場合や、不妊検査を受ける予定の場合は、同じ県内であれば通院しているクリニックでクーポンを使って検査が可能な場合もありますので、一度確認してみましょう。
不妊治療のために通院しているクリニックで検診を受けることが出来れば、通院の負担も少なくてすみます。
子宮頸がん検診を受ける時に気をつけるべきこと
子宮頸がん検診は生理期間を避けて行います。
生理期間中でも検査自体は可能ですが、正しい結果が得られないこともあるためお勧めできません。
また自治体によっては生理期間を外すように指定されているところもあるようです。
生理中に検査を受けるのは抵抗がある人がほとんどだと思いますので、生理中は外して検査を受けることをお勧めします。
その為、生理不順な人の場合は事前予約が必要な集団検診やクリニックより、当日受診が可能なクリニックの方が向いています。
一般的な子宮頸がん検診の流れとしては、問診を記入後、医師による視診が行われ、その後細胞診と言って、ブラシのようなもので子宮頚部を優しくこすり細胞を採取します。
その細胞を検査機関に送り、異形成の細胞やがん細胞がないかが確認されます。
一般的には特に痛みはないと言われていますが、なかには違和感を覚えたり、人によっては痛みを感じる事もあるかもしれません。婦人科での内診が初めての場合は、緊張などから余計に痛みを感じることもあるようです。検診そのものは数分で終わりますので、出来るだけ力を抜いてリラックスして受けるようにしましょう。
検診途中や、検診後に気分が悪くなった場合などは遠慮なく、近くにいるスタッフに声をかけましょう。
服装は、ストッキングなど着脱の面倒なものは避けておいたほうが着替えがスムーズに出来て焦らずに済みます。
また、今はコロナウイルス感染症の影響もあり、ひざにかけるタオル等の貸し出しがないところもありますので、気になる場合は自分でタオルを持参したり、捲り上げやすいスカートなどで受診するのも一つの方法です。
検査結果で異常があった場合は、さらに精密検査が必要になります。
精密検査が必要と言われた場合は出来るだけ速やかに検査を受けにいくようにしましょう。
万が一、異常があっても早い段階で見つかれば治療が可能ですし、妊娠を望める可能性も決して少なくありません。
必要以上に恐れずにまずは検診を受けてみましょう。
子宮頸がんを予防するには
子宮頸がんは、HPVワクチンによって予防できることが証明されています。
ただし、HPVワクチンもすべての子宮頸がんを予防することは難しく、特定の型のヒトパピローマウイルスの感染を予防することが可能です。
その為、ワクチンを接種していても2年に1度、子宮頸がん検診をあわせて受診することが必要です。
HPVワクチンは初めての性交渉前に接種することが望ましいと考えられていますが、性交渉経験後でも接種は可能です。
HPVワクチンの接種が気になる場合は、一度婦人科の医師に相談してみてはいかがでしょうか?
繰り返しになりますが、子宮頸がんは決して他人事ではなく、20代、30代の女性にとって非常に身近ながんです。
ただし、早期発見することで妊娠が可能な場合もあります。
自治体の検診クーポンなどを利用して、2年に1回定期的に検診を受けるようにしましょう。